櫻の園 白泉社文庫

著者 :
  • 白泉社 (1994年12月1日発売)
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本棚登録 : 830
感想 : 94
3

(01)
およそ4人の女子高(*02)の高校生それぞれの,4章からなる物語で,家庭と社会の間にある学校,そして友人や恋人の関係が描かれる.ゆえに描かれる時間は,ある寸前でもある.
重要な演劇の寸前でもあるし,それは高校2年生から3年生へと,開き,散り,実る寸前でもある.主要な人物たちには,高校生なりのそれぞれの時間間隔がある.小学生という過去の自分,姉や年上の彼に重ねられる未来の自分,作品の中では短い時を取り上げているようでいて,過去や未来を含んだより長い時間,やや言い過ぎであるかもしれないが,永遠という無時間の中で,自分の時間が相対化されており,その引きの感覚が,作品に情動を与えている.

(02)
女性性とは何か.現代のジェンダーの問題にも通じており,4人ほどの主人公たちは,それぞれ自分という不思議な存在を,高校生という枠組や社会が求める女性性の型に,うまく嵌め込めずにいることのメランコリックがある.
あれでなければいけない,これでなければいけない,という制約の一方に,演劇という,あれなるもの,これなるもの,という世界を対置し,若き存在たちがそのあたりで震えている.
目鼻口が省略されるのっぺらぼう,コマ割りに顔面の口から上の鼻や目や頭が切断されるショット,この空白や枠外に読者の想像が及び,作品世界が読者それぞれによって補完されているようにも感じる.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: comic
感想投稿日 : 2018年6月28日
読了日 : 2018年6月27日
本棚登録日 : 2018年1月20日

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