AIと人類は共存できるか?

  • 早川書房 (2016年11月12日発売)
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感想 : 17
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日本人工知能学会(本著は2016年に創立30周年を迎えた記念だそうで)の編による、SF作家とAI研究者がタッグを組んで、5つのアプローチから人間とAIの関係を考察したアンソロジー集。
何と言うか…もう本著を企画した段階で勝利だなぁ、と思ってしまいました。SF作家のストーリーとAI研究者の解説がセットになっているのも〇。
AIの入門書を集めて読むよりも、本著をまず1冊読んだ方が「AIとは何か?」をわかる(つもりになれる?)のでは。ただ、注意が必要なのは、本著はAIが普及して変容した世の中を見据えているので、「今AIにできること」を知るための本という意味では、解説で触れられているくらいでしょうか。

5編(対?)の中で、最も直近の未来であり得そうなのが日本政治を描いた「仕事がいつまで経っても終わらない件」で、トーンとしても読みやすいです。
その逆がトリを務める「再突入」で、100年以上先の社会も人間自身も変容した世界を描いているほか、テーマも芸術(現代アートの更に先、という感じ)で、個人的には難解で特に前半は良く理解できず…。ただ、人によってはこの方が歯ごたえがあるんでしょうね。
あと印象的だったのは、「第二内線」が描いた20~30年後のアメリカの分断された姿。本編でアメリカの分断が始まったのは「2020年に当選した大統領が銃規制を推し進めたこと」がキッカケ。さて、足元のアメリカの状況は大丈夫なんだろうか。。

本著を読了して思いを馳せたのは、AIが今後どういう位置づけたり得るのか、ということ。
具体的には「あくまで道具」なのか「自由意思を持つ存在」なのか。(意思の定義を問われそうですが…)
本著の5編を時代順に並べていくと、中ほどくらいから後者の色合いが強くなってきます。倫理の問題もありつつも、これはAIを進化して実現させたいという研究者サイドの思いなのでしょうか。
ただ、個人的にはどこかでAIは必ず落胆期を迎えるんじゃないかと思っていて、それをどう乗り越えるのか(あるいは、耐え忍ぶのか)が大事になると考えています。トンネルの先に、良い未来がありますよう。

刺激的で面白い1冊でした。読みやすさはまちまちなのですが、読み通す価値はあるかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2020年11月7日
読了日 : 2020年11月7日
本棚登録日 : 2020年11月7日

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