自己愛と依存の精神分析: コフート心理学入門 (PHP新書 196)

著者 :
  • PHP研究所 (2002年3月1日発売)
3.53
  • (12)
  • (15)
  • (41)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 231
感想 : 25
4

何よりコフート心理学の特徴だと感じたのが、依存を承認していること。精神分析では発達の段階として、まず自体愛、自己愛、対象愛という順序で成長していくというのが前提なのだが、コフートは精神分析医で精神分析の創始者のフロイトの娘のアンナ・フロイトに師事していたのにも関わらず、コフートはその精神分析の発達段階とは違い、自体愛、自己愛、成熟した自己愛という段階が必要だと言っている。これらでいう自己愛とは、他者と関わる時、自分を評価して欲しいとか愛して欲しいという思いが強く、相手がどんな気持ちとか、何を考えているかという「共感」ができず、対象関係なのに、自分のことばかりに意識が向いている状態で、相手に「依存」している状態である。

フロイトはこれを対象関係ではないと認識して、これを脱却して対象愛に向かわなければいけないと言っているのだが、コフートは「人は依存しないと生きていけない」と言いお互いが成熟した依存をして共感しあう相互依存なら「ギブアンドテイク」で必要だと言っています。そしてそうしてエネルギーを補給してくれ、共感を感じる対象のことを、自分の一部のように感じる対象という意味で「自己対象」と呼びます。

そしてこの自己対象には三つの種類があり、一つが自分は大切にされている、価値のある人間だと感じさせてくれる対象を「鏡自己対象」。自分がどのように生きていけばいいのか分からない時に、生きていく方向性を与えてくれるような対象を「理想化自己対象」。自分はみんなと同じ人間なんだ、みんな一緒なんだと感じさせてくれる対象を「双子自己対象」と呼びます。これらの自己対象を上手くみつけ、お互いにギブアンドテイクな関係を作っていくことこそ、コフート心理学の特徴であり、目指すところのようです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年8月8日
読了日 : 2013年8月8日
本棚登録日 : 2013年8月8日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする