猫の大虐殺 (岩波現代文庫 学術 185)

  • 岩波書店 (2007年10月16日発売)
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感想 : 7
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現代社会はネットが普及し、電気も水も火も自由に使え、子どもには教育が与えられている。そんな時代の私達が、そういう当たり前だと思っているものがない時代の文献を言葉通りに受け止めることは大きな誤解を生み出すことは言われてみれば当たり前のこと。この本は文献の書かれた時代の書いた人、受け止めた人々の生活を考えることでその言葉の本当の意味を考えさせる。
タイトルの『猫の大虐殺』は正しくその筆者の考えを象徴的に表している。現代人の感覚からするとアリエナイ、非人道的な行為に思われるこの大虐殺も、18世紀の労働者によって歓声と共に迎えられた。彼らからすれば惰眠を貪り自分たちよりも美味しいものを食べ、働くことのない親方夫婦へ一矢報いる行動にすぎない。しかも、その行動によって自分達の生活が改善しようとは思っていない。パントマイムという方法で暫くの間娯楽を得て気を紛らわすのだ。
この本から垣間見得る当時の人々はタフで感情豊かで私達とは違う価値観をもっている。また、この本の最終章、読者がルソーに答える、で描かれる読書のあり方は筆者自身が私達読者に訴えかけるものと同じものだろう。
本の中の登場人物達が本当に生きているかのように感じること、実在を信じること、それによって得られることができることは大きな感動なのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年7月8日
読了日 : 2013年7月8日
本棚登録日 : 2013年7月8日

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