石原莞爾の世界戦略構想(祥伝社新書460)

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  • 祥伝社 (2016年3月31日発売)
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本書は、陸軍中将石原莞爾の構想を彼の論考や他の軍人の回想などから読み解こうと試みる一冊である。
読後の印象としては、石原は「奇才」であったことは間違いない、と思った。優秀な陸軍軍人のなかでも、このような将来的構想を綿密に練っていたものは数少なかった。仏教に傾注していたのも注目に値する。
彼がいうところの対米持久戦争や対米最終戦争を遂行するために満蒙権益を重視しており満州事変を起こした。支那事変が始まってからは、陸軍主流派や近衛、広田弘毅らが戦線拡大を強硬に主張していたが、石原は対ソ軍備を念頭に不拡大を主張した。当時の軍部は、対支強硬派が主流であり、不拡大派は少数派だったため石原や多田らの努力も虚しく泥沼化した。
石原系が陸軍で実権を握ったらあの惨劇はもたらされなかったのではないかと思う。近衛文麿の罪は重い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評伝
感想投稿日 : 2022年10月4日
読了日 : 2022年10月4日
本棚登録日 : 2022年1月21日

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