もったいないことをした。本書は「訳者あとがき」から読むべきだった。
パリ郊外の空き地におんぼろのキャンピングカーとトラックで乗りつけたジプシーの大家族と、図書館員の出会いが引き起こす物語。フランスのジプシーと言われてピンと来なかったことに加え、題名とは少し異なる展開から来るもどかしさにずっと苛まれたまま、読了してしまった。
『ザリガニの鳴くところ』の意義が、白人貧困層というほとんど報道もされない人たちにフォーカスを当てたところにあったように、本書の意義もジプシーを取り上げたところにあった筈なのだ。米国の白人貧困層については多少の知識を持ち合わせていたけれど、フランスのジプシーに関してはほぼゼロ。「訳者あとがき」にていねいに書いてあったジプシーの歴史背景を先に読んでいれば、このもどかしさも半減したに違いない。
とは言え、学術書や参考書などではなく、美しい小説を通じて自分の知らない世界に触れることができたことは素直に嬉しい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本・雑誌
- 感想投稿日 : 2020年10月4日
- 読了日 : 2020年8月10日
- 本棚登録日 : 2019年12月15日
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