恋をしましょう (バンブー・コミックス 麗人セレクション)

著者 :
  • 竹書房 (2006年4月27日発売)
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本棚登録 : 260
感想 : 26
4

働くおじさん。リーマンスーツ萌えにしては、かなり年齢が高い主役たち。一生懸命仕事をして人生の酸いも甘いもかみ分けた、いい年のオジサンが恋に身を投げ出すのです。西田センセの描く、切なくもあり、カッコよくさえもあるおじさんたちに心奪われました。

短編集なのでスーツのおじさんがひしめいています。渋い。
「恋をしましょう」では、仕事はバリバリこなすけど下半身は男好きな経営コンサルタントの小林が主人公。若い男が好みだったはずなのに、仕事先の保険会社で中年部長荒木に惚れてしまいます。自分の人生を捧げた会社が合併吸収という一大事に、せいいっぱいの誠意を持って対処する荒木は、まさに中年の鑑!
おっさんなんかに惚れるか、と自分の気持ちを否定しまくりだった小林も、やがてそんな恋心を認めざるを得なくなるのです。
企業戦士だったおじさんに「恋をしましょう」と、自分自身の人生を正直に生きようとオススメしながら、小林自身も自分の気持ちに正直になっていきます。仕事も恋も、は乙女だけじゃなくおじさんもです。

「DIRT」では、銀行強盗×支店長。この支店長も仕事第一。命より会社。金を奪われまいと必死で抵抗するうち、二人の間には何やらとても隠微な空気が。歯抜けの攻って初めてです…でもマヌケじゃなくて、とてもセクシー。
「あの頃に戻れない」は、同期のリーマン同士。昔と今で出世に差が出ている二人。何故、広瀬ががむしゃらに仕事をして出世しようとしたかと言う理由が意地らしいのです。中年ツンデレ。
「胸いっぱいの」は、中間管理職の悲哀が感じられて印象的な作品。頑張って出世して、働きすぎでいっぱいいっぱいになってしまった春日。唯一彼を心配して癒そうとする警備員の心優しい青年に、八つ当たりで暴力を振るってしまうほど追い込まれてしまっています。そんな自分自身を見失っている春日を救った和也の優しさが健気。

一番気に入ったのは「連れて行ってくれ」。シリアスでものすごく泣けました。愛する男が妻子持ち。彼のことをものすごく愛している清水は、自分から離れないようにアルコール依存なのを黙認した上で、世話を焼きまくります。ちょっとすごいヤンデレぶりなのです。酒のせいで仕事バリバリだった時の面影も無くなっているのに、それでも愛していて、でも最後は彼のためを思って悪者になっちゃう。そこまでできる清水の愛の深さに涙。そんな彼に見せた千葉の気持ちにも涙でした。熱すぎる愛がほとばしっています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 西田東
感想投稿日 : 2012年2月27日
読了日 : 2012年2月27日
本棚登録日 : 2012年2月27日

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