暗闘

著者 :
  • 幻冬舎 (2017年1月27日発売)
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感想 : 30
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トランプ政権誕生後の安倍政権の動きを克明につづったノンフィクション。
表にはなかなか出ないであろう政権中枢の肉声を丹念に拾い集めて読ませました。
過激な発言でメディアを賑わわせるトランプ大統領ですが、初めて直接会談した際の安倍首相の印象は違ったそうです。
「威圧感はなく、逆にどちらかといえば緊張しているように見えた」
巷間伝わるトランプの印象とはかなり異なります。
TPPから永久に離脱するという大統領令に署名したトランプですが、日本政府がなお一縷の望みを捨てていないことも分かりました。
北方領土を巡るロシア側との激しい駆け引きは迫真もので、巻を措く能わず時間を忘れて読み耽りました。
昨年12月に山口県で開かれた日ロ首脳会談は、「大きな進展はなかった」という見方が大勢のようですが、著者の見立ては違います。
会談後に出された「プレス向け声明」を丁寧に読み解き、今後の領土交渉に前向きな意味があることを教えてくれます。
著者の山口さんには、安倍首相や麻生副総理とかなり近いことから、「政権の走狗」「ジャーナリスト失格」との批判も強いです。
私も著者の前作「総理」を読んだ時に、面白いと同時にジャーナリストとしてはいかがなものかと違和感を持ちました。
ただ、現在、これだけ政権中枢に肉薄しているジャーナリストは恐らく数える程度でしょう。
しかも、そのリアルな肉声を、政権側に軸足を置きながらも、真摯に伝えています。
むしろ、政権と厳しく対峙しているように見せかけながら、その実、裏では政権としっかり「チークダンスを踊っている」(辺見庸氏)大手メディアの方が罪深いのではないかと最近、思い始めています。
政治の舞台裏に興味のある方はぜひ。
私は図書館で借りて読みました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月6日
読了日 : 2017年4月6日
本棚登録日 : 2017年4月6日

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