親といるとなぜか苦しい: 「親という呪い」から自由になる方法

  • 東洋経済新報社 (2023年5月24日発売)
3.79
  • (28)
  • (35)
  • (35)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 855
感想 : 51

【まとめ】
0 まえがき
愛情不足の中で育ったり、溺愛や支配を受けて育った人は、親を求める気持ちが通常以上に長く残り、親の心理的支配がいつまでも続いていたり、親がわりの存在を求めてしまったりする。
親に反発し怒りをぶつけている場合でさえも、心の中では、親に愛されたいという思いを引きずっている。愛されたい気持ちが裏返って、怒りや攻撃となっているが、それも、形を変えた愛情を求める気持ちなのだ。
求めれば求めるほど裏切られ傷つくという状況が、親子関係で苦しむ人に共通するジレンマだ。

カサンドラ症候群、つまり、妻が感受性の豊かな安定型や、感受性の過剰な不安型で、夫が気持ちに無関心な回避型という組み合わせの場合、妻は最愛の伴侶であるはずの存在と気持ちを共有することができず、精神的にネグレクトされた状態に置かれる結果、心身の不調をきたしてしまう。それと同じことが、感受性の低い、気持ちを汲み取れない親と感受性の高い子どもという組み合わせでは起きてしまうのである。

本書では、精神的に未熟な親がその子ども、それも特に感性豊かな子どもにおよぼす影響について述べていく。


1 未熟な親とその子どもの特徴
精神的に未熟な親のもとで育った子どもは、表面的にはごくふつうの大人に成長していたとしても、心の真ん中にはぽっかりと大きな穴があいたままだ。
子どものときにおちいった孤独をずっと抱えたまま進学し、就職し、結婚して子どもを育てている。大人になっても心の中に居座っている孤独感に悩まされるのだ。

●精神的に未熟な親の特徴
・子供の思いを平気でスルーする。子どもが感情を持て余すとどうしていいかわからずに、怒ったり、罰を与えたりする。
・些細なことにも過剰に反応する。
・言動や考え方が自分と違う相手を前にすると、よくイライラする。自分を省みず、自己中心的で、誰とどんな話をしていても、すべて自分の話題に持っていく。
・気まぐれであり、言っていることがよく変わる。
・自分が落ち込んでいても、表面的ななんのなぐさめにもならないことを言うか、逆に怒ったり、嫌味を言ったりする。
・両極端な考え方をしがちで、新しいアイデアを受け入れようとしない。
・融通が利かず、1つのことを思い詰める。
・ストレス耐性が低い。自分のまちがいを認められず、事実を信じなかったり、ほかの人を責めたりする。
・安定した感情を保つことが難しく、しばしば過剰に反応する。いったんカッとなると、容易に気持ちを落ち着けることができず、ほかの人が自分の思いどおりに動けば、自分の気持ちは鎮まるにちがいないと考えている。

●悪影響を受けた子どもの特徴
・自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先し、進んで大人の役目を引き受けたがる。「自分は精神的に求めることなどない」という態度を出す。
・自身が幸せなはずだと思い込み、不平不満を言うことに罪悪感を覚える。
・自分の気持ちを押し殺し、精神的な孤独を深めていく。
・自己肯定感が低い。


2 未熟な親には理由がある
精神的に未発達な親の多くは、子どものころに感情を封じこめてきた。それぞれの家族の歴史をひもといていくと、幼いころ、家の中がみじめで異様な緊張感に満ちていたという。相談者の親の多くが、自分たちの親との間に、つながりがなかったようで、だからこそ彼らは、精神的な孤独に耐えるために、幼いころから心に厚い壁を張り巡らせてきたのだろう。
このころの世代の子育てでは、子どもの精神的な安定や個性といったことを考えるよりも、子どもの発達における絶対的な基準として、子どもがどれだけ親の言うことに従うかが重視されがちだった。しっかりとした自己意識や成熟したアイデンティティを育んでいくには、自分の感情や思考をじゅうぶんに掘りさげてから表に出すことが必要だが、それが許されなかったのだろう。そのため、気まぐれで一貫性に欠け、思考の未熟な大人になってしまったのだ。


3 未熟な親の4つのタイプ
①感情的な親
感情のままに行動し、過干渉かと思えば急に突き放したりする。自分はみんなから気にかけてもらい、大切にあつかってもらって当然だと思っている。簡単にへそを曲げるので、家族総出でなだめにかかる。自分の感情が爆発すると、そこに子どもを巻きこみ、その強烈な絶望や怒りや憎しみをぶつける。
ストレスや気分のアップダウンを上手に扱うことが難しい。

②がむしゃらな親
異様に目的思考が強く、あらゆるものを完璧にしようとせずにはいられない。子どもの人生のことのなると、コントロールしたり口出ししたりする。
他者を憶測で決めつけ、自分と同じようにしたいはず、同じことに重きを置いているはずと考える。こうした過度な自己中心性が、自分は他者の「ためになっている」という思いこみへとつながる。子どもの興味や人生への夢を受け入れるより、自分が見たいものを選んで言葉たくみに押しつけ、子どもの人生にやたらと口出しする。

③受け身の親
放任主義で、問題を避けたり黙認したりする。
子どもが世の中を渡っていくのに役立つこと、物事には限度や限界があるといったことを教えもしなければ、導いてやることもない。子どもを愛してはいるかもしれないが、力になってやることはできない。物事が過度に感情的になってくると、とたんに受け身になり、心のシャッターを下ろして、見て見ぬふりを決め込む。
未熟で自分本位なのは他のタイプと同じだが、おだやかで陽気なことも多く、4タイプの中では一番人好きがする。

④拒む親
そもそもなぜ家庭を持ったのかと思うような行動をする。精神的な親密さをよしとせず、子どもにわずらわされるのを露骨にいやがる。
一人でやりたいように過ごせるのが何よりの幸せと感じる。子どもは自分が、親をわずらわせ、いらつかせていると考えるようになる。


4 未熟な親のもとで育った子どものタイプ
●問題を内在化するタイプ
自分次第で状況を変えられると思うタイプ。ほかの人を不快にさせたときの罪悪感や、自分を偽っていると非難される恐怖感を抱いたときに、主として不安を覚える。限界を迎えていても平静を装い、黙って苦しむ。自己犠牲が行きすぎ、その結果、自分がこんなに尽くしているのにと怒りを覚え、人間関係にダメージを負う。一方で、内省することで心理的に成長していく傾向にある。

●問題を外在化する
考える前に行動するタイプ。とにかく早く不安を払拭したくて、すばやく反応し、衝動的にものごとを進める。内省することはほとんどなく、何かあれば自分の行動よりもほかの人や環境のせいにする。
自分の間違いを将来に活かすことはめったにない。自分が幸せになるためには周囲が変わらなければならないという考えに固執し、自分の望むものをほかの人が与えてさえくれれば問題は解決すると信じている。
彼らは、自分は有能な人に助けてもらってしかるべきだ、ほかの人ばかりいい目にあっていて、不公平だと信じている。

精神的に未熟な親は多くが外在化タイプだ。


5 未熟な親に対してどう対応すべきか
いつか親は変わってくれるという幻想を手放そう。
そして、まずは相手を観察するために心の準備をしよう。

①距離を置いて観察する
親の精神的な未熟さを見極め、親を喜ばせる役割としての自分を演じるのではなく、自分の心のままに行動する。

②観察できるようになる
まずは、ゆっくりと呼吸を数え、全身の筋肉の緊張と脱力をくり返したり、心がおだやかになる情景を想像したりしよう。次は、精神的に距離を置いたまま、相手の行動を「科学者のように」観察する。人間学のフィールドワークをしているつもりでやってみよう。
とにかく「距離を置くこと」。それから意識して相手の様子を言葉にしてみる。ボディランゲージは何を伝えているのだろう?声はおだやか?緊張している?ものわかりはよさそう?悪そう?どんな反応をする?

③関連と関係を使い分ける
観察を続ければ、親からの精神的な駆け引きに振り回されたり、期待を押しつけられることなく、彼らとかかわり、つながっていられる。これが「関連」で、関係とはちがう。

観察できるようになったら、相手の成熟度を見ていく。相手が精神的に未熟な人の特徴を示していると思ったら、次の3つの方法を取ってみよう。

①伝えるだけで、あとは何もしない
できるだけおだやかに、客観的に自分の言いたいことを相手に伝え、結果をコントロールしようとしない。自分の気持ちや思いをはっきりと口にし、そうやって自己表現することを楽しむ。他者に共感や理解を求めない。

②関係ではなく、結果に意識を向ける
他者とつき合う中で、自分が本当に相手に望んでいることは何か。自問し、正直に答えよう。相手が親の場合、自分の話を聞いてもらいたい?理解してもらいたい?これまでの行為を悔いてもらいたい?あやまってもらいたい?償ってもらいたい?
親に共感してもらいたいとか心を入れ替えてもらいたいと思っているなら、そんなことを考えるのは今すぐやめて、別の目標をみつけよう。もっと具体的で実現可能な目標を。

③巻きこまれるのではなく、管理する
未熟な人に精神的に巻きこまれるのではなく、目標を決めてそのつき合いを管理すること。管理する要件の中には、その人との関係をどれくらい続けるかや、話題も含まれる。相手が話題を変えようとしたり、感情的に攻撃してこようとしたりしても、おだやかにやりすごすこと。あくまでも丁寧に。

親の温かさに期待してはいけない。
あなたのなかにいる「内なる子ども」はいつでも「親が変わってくれて、自分がずっと望んできたものを与えてもらえる」と期待する。だが、あなたがすべきことは、大人としての自分の考えをしっかりと持ち、独立しひとりの大人として親とつき合っていくことだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月29日
読了日 : 2023年11月29日
本棚登録日 : 2023年11月29日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする