データで見る行動経済学 全世界大規模調査で見えてきた「ナッジの真実」

  • 日経BP (2020年4月17日発売)
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行動経済学の本です。ナッジという、政策に行動経済学の考え方を取り入れる手段が注目されています。正しく使えば、法律や条例などで罰則を設けたり、金銭的なインセンティブを設けたりすることなく、住民が自発的に正しい行動をとるようになるとされます。一方で、導入の方法を誤り、「誘導されている」という印象を与えてしまうと、住民の抵抗感や不信感を生むことが懸念されます。これからの人口減少社会で、行政コストの削減は避けて通れないテーマだと思われます。この本を読んで、ナッジの効果と注意点の正しい知識を学ぶことは、今後の社会のあり方を考える上で有効なのではないでしょうか。

【特に覚えておきたいフレーズ】
「政府・制度への信頼はナッジへの賛成と高い相関がある。信頼を得る一番の方法は、信頼を得る努力をすること。行動情報を活用した政策が社会の厚生を促進するようにするだけでなく、政策が透明性をもって採用される十分な機会を提供し、住民の反対意見や懸念に耳を傾けることも重要になる。」
「正当性を持つためには、正当な目的の促進、個人の権利の尊重、人々の価値観や利益との一致、人を操作しない、明確な同意がないまま人から取り上げたものを他人に与えない、隠さず透明性をもって扱う、という6つを守る必要がある。」
→これらは、ナッジに限らず、政府や行政にとって施策を考える上で最も重要なことです。また、企業と顧客の関係においても同じことが言えます。

【もう少し詳しい内容の抽出】

〇ナッジとは
・ナッジとは、行動経済学の理論的な枠組みに基づいて、メッセージやデザインによって情報提供の方法を工夫したり、申請の仕方や選択肢の提示の仕方を工夫したりするもの。大きな金銭的インセンティブや罰則を使わないで、人々の行動に影響を与える政策手段である。低コストであるため、政策担当者の注目を集めている。
・「選択する自由も残しながら、人々を特定の方向へ導く介入」というナッジの特徴を知った人の中には、ナッジによって自分が政府に誘導されているようで嫌な気持ちになる人もいることが問題点。ナッジを政策に使う場合は、人々の好みや倫理的判断を知っておく必要がある。
・心理学や行動経済学で知られている、意思決定に影響を与えやすい表現の特性を利用する「情報提供型」と、デフォルトからの変更の手間がどれだけ小さくてもデフォルトの選択を選ぶ傾向の特性を利用する「デフォルト設定型」に分けられる。

〇世界各国でのアンケート調査の結果からわかったこと
・人々が反対する可能性が最も高いナッジは、目的が不正であるとみなされるもの、大半の選択者の利益か価値観のいずれかと一致していないと見られているもの。認知処理の過程に無意識に働きかけたり、潜在意識に訴えたりするナッジよりも、よく考えて判断をするようにさせるナッジが選考される傾向がある。大半のケースでナッジに対する賛否を決定するのは、ナッジそのものに対する評価より、特定のナッジの目的に対する評価である。
・さまざまな国や文化にわたって、ナッジは政策ツールとして高い水準の支持を得ている。
・政府・制度への信頼はナッジへの賛成と高い相関がある。信頼を得る一番の方法は、信頼を得る努力をすること。行動情報を活用した政策が社会の厚生を促進するようにするだけでなく、政策が透明性をもって採用される十分な機会を提供し、住民の反対意見や懸念に耳を傾けることも重要になる。

〇ナッジに適用されるべき権利
・ナッジは、「人間の行動主体性をないがしろにしている」「政府への過度な信頼がベースになっている」「目に見えない」「人を操る」「行動バイアスにつけこむ」「『人間は不合理』という間違った前提に立っている」「周縁の問題にしか機能しない」といった誤解を受けやすい。
・正当性を持つためには、正当な目的の促進、個人の権利の尊重、人々の価値観や利益との一致、人を操作しない、明確な同意がないまま人から取り上げたものを他人に与えない、隠さず透明性をもって扱う、という6つを守る必要がある。
・すべてのナッジは、公共の福祉や社会全体の厚生を純増させ、最大化させなければならない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2021年1月15日
読了日 : 2020年12月17日
本棚登録日 : 2020年12月17日

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