あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略

著者 :
  • SBクリエイティブ (2020年7月7日発売)
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感想 : 17

時代の変化に対応した新しい働き方を考えるための本です。
ネットの普及で学習方法は広がり、スキルを身につけることが昔ほど難しくはなくなっています。
スキルだけでは差別化できない中では、相手の立場で考え、相手にとって意味のある存在になることが必要であることの重要性が増しています。
オンラインで他人とつながりやすくなったメリットを生かしながら、どうやって相手にとって意味のある存在=「有り難い」存在になるかを学べます。
時代の変化に対応していくことに不安を感じる方が読むと、これからの方向性のヒントを得られる1冊ではないでしょうか。

【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】
「これからの時代における“働き方”で大事なのは、『誰にとって意味のある存在か』という問い。その答えを持てる存在になる。人間関係をベースとした『あなたが好きだから一緒に仕事がしたい』という信頼関係を築くことが、個人の働き方の主軸になっていく。」
「すべての人間関係は『相手の視点に立つこと』からはじまる。相手の視座に立って学ぶと、新たな着想を得ることができる。着想を得るには、自分からより遠いものを掛け合わせることが最も重要。自分にとっての当たり前が、居場所を変えれば誰かの『ありがとう』につながる。」
「これからは、変化が起きるたびに新しい航路を自分で導き出さなくてはならない。向かうべき方向性が示すコンパスが常に変わるつもりでいたほうがよい。今の状況を認識した上で、お互いのコンパスを持ち寄り、“誰のコンパスが我々にとって最も大事か”をしっかり確認し合い、最も適切なコンパスを持つ人のもとで意見を募って議論していくことが大事。」
→これからの働き方ということで紹介されていますが、それらの本質は、これまでの働き方でも重要だったものではないかと感じています。違いは、技術の進化で変化のスピードが激しくなっていること。デジタル、オンラインなどを駆使した考え方、働き方のアップデートは必要です。ただ、変わらない本質を忘れないことが最も大事なのではないかと思います。

【もう少し詳しい内容の覚え書き】
・ネットで誰もが高速学習できる今、「役に立つ」だけのスキルは競争過多になる。大事なのは「他の誰かではなく、あなたに仕事を頼みたい」という、誰かにとって意味がある存在になること。その積み重ねで多くの人の「意味のある」存在となれば、最終的に人は「何者かになる」のではないか。
・我々は「有り難うの意味」を忘れ、「数字のオバケ」にとりつかれてしまいやすい。「自分の物差し」を育てる。自分が誰かから「有り難う」と言ってもらえる
ギブを繰り返す。繰り返して、特定の誰かにとっての「意味のある存在」になれば、最終的に「何者か」になる。あえて数字を追う世界からおりることで、「意味のある自分」を見つける。
・用意された問題を素早く正確に解くことが重要だった時代は、近くにいる同質な仲間とスクラムを組んで走ることが成功ルールだった。変化が激しく、昨日までの正解が突然通用しなくなる時代においては、遠くの人とゆるくても意味ある絆でつながっているほうが、誰かが穴に落ちても他の人は傷が浅かったり、または時代の前線に立っていたりと、助け合うことができる。同質な仲間でかたまりすぎていると、全員が穴に落ちるリスクが増える。
・「ありがとう」の習慣のいいところは、相手への感謝を言語化するため、必然的に相手にフォーカスして思考が回ること。人は自分のことばかりフォーカスするとどうしても不安になる。感謝をベースに他者のことを考えていると、視野が広がり、自分への過剰なフォーカスが外れ、ポジティブな気持ちになる。
・自分が「有り難い」と感じたことを言葉にすると、それを見聞きした人に自分の見聞をシェアでき、そうしたささやかなギブをつないでいくと、自分や世の中の不安を打ち消していけるのではないか。
・あらゆる価値観から褒められる体験をいろんな角度から受けると、「こういうことをやってもいいんだ」という意識が積み重なり、今までの価値観が薄まり、「本当に褒められたいものはなんだろう?」という自分の価値観を築き上げていける。今は、ネットに飛び込むと複数の価値観のコミュニティに所属できる。いろいろな居場所があり、お互いに優しく接したり、知識やお金などをシェアしあうことで、自分の鎖を解くことができる。

◯「組織から個人」の時代に本当に必要なこと
・これからの時代における“働き方”で大事なのは、「誰にとって意味のある存在か」という問い。その答えを持てる存在になる。人間関係をベースとした「あなたが好きだから一緒に仕事がしたい」という信頼関係を築くことが、個人の働き方の主軸になっていく。
・これからは「互助・共助のつながり」をいかに個人が作っていけるかが大事。価値観の相対化ができる。非常事態でそれぞれ困難に見舞われても、物理的距離を持ち、同じ価値観を持つ者同士が、インターネットを通じてサポートができる。
・信頼関係ができ、人を疑うコストがなくなれば、情報伝達や人との出会い、コミュニケーションが速くなる。まずは受け入れ、アイデアを積み重ねれば、いつの間にか面白いものが出来上がる。

◯「ギブ」を仕事の基本に
・すべての人間関係は「相手の視点に立つこと」からはじまる。相手の視座に立って学ぶと、新たな着想を得ることができる。着想を得るには、自分からより遠いものを掛け合わせることが最も重要。自分にとっての当たり前が、居場所を変えれば誰かの「ありがとう」につながる。
・情報収集の基本はアクティブ・ラーニング。「後で誰かに教える(アウトプット)つもりで聞く(インプット)」と、情報がしっかり頭に入る。「今、自分が知りたい情報は何か」を自分に問いかけ、“意識的”に収集する情報を設定するのがコツ。知ったことを誰かに話す前提で話を聞いたり本を読むと、より必要な情報をクリアに選別し、吸収できる。
・質問は、そのものが情報をギブする行為。質問側は“自分はコレに興味がある人間です”というアピールになる。された側は、“こういう観点で聞いてくれたのか”というフィードバックになる。相手と仲良くなる手段でもある。毎日情報をギブし続けていると、いい質問ができるようになる。相手になくて自分が持っている視点を見つけると、いい質問ができる。

◯オンラインで自然につながりをつくる
・SNSやネットのいいところは、自分とちょうどいい温度感でプロジェクトや仕事を進めている人のことが、コメントやブログなどから感じ取りやすいこと。同時に自分も発信することで、「自分の温度感はだいたいこれくらいです」ということを、見ている人に伝えることもできる。
・はじめは勇気がいるが、自分なりの熱量によって語られた「好き」をインターネット上で発信し続けていくと、あるタイミングで、誰かが受け止めてくれるという経験を得られる。発信とキャッチしてもらうことを繰り返すと、発信に抵抗がなくなる。コツは、シンプルに繰り返して慣れる。1度ダメでも工夫すればよい。
・「主義」や「信念」は生きるエネルギー源であるため、価値観より力を持つ。そこに引っかかってしまうと、つい怒りを暴走させてしまう。感情に溺れないために大切なのは、自分の信念や価値観を正しく認識し、それを他人に押し付けず、否定せず付き合っていくこと。常にニュートラルを保つ。そのためには、自分の信念や価値観が相手にとってはそうではないことを知ることが大事。

◯オンラインファースト時代に自分の武器を見つける
・仕事の中のライフワークとライスワークの比率がどれくらいか振り返る。ライスワークを「ライフワークに没頭するお金と時間とリソースを生み出すもの」と考える。ライスワークで最低限の生活をキープしながら、「ここからはライフワーク」と頭を切り替え、時間やお金を投資する。稼げるようになれば、ライフワークだけで生きていける。
・何をギブすればよいか考えるときは、努力が苦にならないもの、相手から求められるものを探す。
・「好き」が高じてくると、“相手には見えない視点”でものを見れるようになる。傾向から「好き」の要素を抽出する(Extract)、相手の視点に自分独自の視点を掛け合わせアイデアを拡大する(Expand)、他の人を引きつけるほどのレベルの「好き」になったらそのものをギブする(Express)、の3つのEで「好き」を捉え、言葉にしてみる。

◯変化の中で自分らしい生き方を設計する
・これからは、変化が起きるたびに新しい航路を自分で導き出さなくてはならない。向かうべき方向性が示すコンパスが常に変わるつもりでいたほうがよい。今の状況を認識した上で、お互いのコンパスを持ち寄り、“誰のコンパスが我々にとって最も大事か”をしっかり確認し合い、最も適切なコンパスを持つ人のもとで意見を募って議論していくことが大事。
・仕事で退屈せずどこまでも成長していく人のほとんどは、いつも夢中だったり、幸せそうだったりする。与えられた仕事でも、すぐに覚えられそうな単純作業でも、その中に自分なりの意識や美学を見出すことに非常に長けている。社会的交流の質や量(範囲)を広げる、仕事の意義を広げる(目的を大きな範囲から見直す)、仕事の内容に手を加えてみる(課題を変える)、という3つを意識するとよい。没頭することは、人を惹きつける効果もある。
・成長に必要な振り返りは、①客観的事実(知る)、②主観的感想(わかる)、③一般化(できる)、④適用(している、③を検証するためにすぐやることの宣言)、の4段階でループを回す。やってみて、何ができて何ができないかがわかれば、あとは行動するだけになる。興味を持ったら、「どうやって自分の行動に落とし込めるか」を考える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年
感想投稿日 : 2021年6月27日
読了日 : 2021年6月27日
本棚登録日 : 2021年6月27日

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