元外資系投資銀行マンによる、「投資銀行」紹介の本。
Investment Bankがどういう機能を持っていて、社会の中でどういう役割を果たしているか、簡単に説明されている。
副題には日本に大変化が起こる、とある。この本が書かれた当時が2006年の5月。経済は「戦後最長の成長期間」のまっただ中で、外資系企業ブーム(就職市場などにおいて)のようなものが広がっていった時期だ。
それから実に6年が経過したわけだが、日本社会は、経済構造はどのように変化したのだろうか?
市場主義とでもいうべきメカニズムを著者は積極的に迎えるべきだ、投資銀行やKKRのようなファンドの到来が否応なしに日本の経済を変える、と筆者は主張する。
僕は基本的にこの考え方には賛成だ。競争、という仕組みが資本主義の大原則だからである。
ところが現実の日本社会を見てみると、必ずしも筆者の言うような企業淘汰は進んでいない。競争力のあるバルジブラケットが市場を席巻する、ということはあまり起こっていない。
それはリーマンショック以来の金融危機で、financial industry、特に欧米系の体力が落ちたということがあるだろうが、日本社会の変化への弱さを感じざるを得ない。
郵政民営化の反動、ペイオフをめぐる議論、「キコウ資本主義」、どれをとっても民間市場による淘汰が積極的に行われていない、あるいは行おうとしない例である。
これらが資本主義を歪めているのか、修正しているのか。日本の資本主義はいかなる方向に進むべきか。
直接的なレビューから外れてしまったが、投資銀行という極めて市場主義的な存在が日本に突きつける問題は大きい。
- 感想投稿日 : 2012年3月12日
- 読了日 : 2012年3月11日
- 本棚登録日 : 2012年3月11日
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