スパイ教室10 《高天原》のサラ (ファンタジア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2023年7月20日発売)
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本棚登録 : 152
感想 : 7
4

最初に表紙を見た際は「これ誰だ…?」って一瞬感じてしまったよ。そのくらい印象が様変わりしたね。それは見た目だけでなく中身も


これまでは分担ごとに別作業・任務に就く事はあっても連携を取らない形でバラバラにスパイ活動を行うなんて無かった
けど今回のライラット王国編はそのバラバラを求められたわけだ
勿論、本人達は納得しているし、任せられるだけの成長を示した背景もある。けどそれを以ってエルナ達が一人前になったと言い切れるわけではなくて

そういった不安定さをこれでもかと感じ取れた巻だったよ


エルナとアネットだけの潜入任務。おまけに目的は革命の実行。戦力的には頼りになっても任務達成という面では元々不安の多い二人
潜入こそ上手く出来ても一度創世軍に見つかった程度で困窮してしまう程度のチームワークと実力。また、エルナとアネットは問題を多数内包するライラットという国をどうするのかという点が大きく乖離しているから目的の共有も微妙にズレている
だから上手くいっているように見えて危うい方向に進んでいるなんて当たり前の話で

エルナの失策はあまりにあまりなもの
普通のスパイ相手なら少し近付いたくらいで危機に陥るなんて有り得ない。その点はエルナがニケというスパイの危険度を見誤っていたという点に尽きる
ニケの視界に入った。それだけでエルナの任務は終わりかけた
アネットはエルナの失敗を補う役割を担っているけど、それでニケに敵うわけではない。やはり二人はスパイとしてはまだまだ未熟だと感じられる程の完敗


革命実行役としては最適かというと疑問符が浮かぶエルナとアネット。けど、他の面々だってギリギリの役目を担っている。そもそもライラットはニケという強大なスパイが居るからこそ分散策を採ったのだろうし
最善の選択が存在するかも判らない難しい局面。クラウス以外に判断できる者が居る訳がなくて
だからこそクラウスはサラの反対意見に感動しつつも厳しく反対したのだろうね

以前のサラならその時点で折れて引き下がるようなクラウスの強硬な態度
ここで現実に負けるより理想と心中したいと決意するとは以前の彼女を知っていれば知っているほど驚かされるね
スパイとしては有り得ない夢。でもサラはその夢を本気で叶えようとしている。その本気は誰もの認識を上回るもの。

以前、サラはアネットの闇を受け止めた。あの時はアネットの理性的でない面を許容した為に受け止められたのだと思っていた
でもその時に生まれた繋がりがサラを『悪』に変えていくとは思わなかったな。勿論、アネットのような完全悪ではないのだけど、人に合わせてばかりのサラはアネットの『悪』に触れる事で変われたのだろうね

生まれ変わったサラだから嘘に嘘を塗り固めるような遣り方でニケを一時的に上回れる
でもサラが本質的に持つ皆の未来を守ろうとする姿勢は失われない。だからサラの《秘武器》はバラバラになったスパイ少女達を繋ぐものであり、革命の希望も失わせないものになる


負けそうだったけど負けに終わらなかったニケとの対面。また、他のスパイ少女達も躍動を始めようとしているようで
ここに謀略の双子が残した『LWS劇団』や『お姫様』はどう関わってくるのかな?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2023年7月26日
読了日 : 2023年7月25日
本棚登録日 : 2023年7月7日

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