やがて君になる(2) (電撃コミックスNEXT)

著者 :
  • KADOKAWA (2016年4月27日発売)
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本棚登録 : 877
感想 : 32
5

「特別」が判らないと嘆いていた侑と「特別」になろうとした燈子。そんな二人があのような道を選んでしまうことになるとは……

侑の優しさに付け込み数々のイチャイチャを繰り返す燈子。でも、そんな行為は侑が拒絶してしまえば出来ない代物。
侑が元々人の想いを受け入れやすい質である点が大きいのだろうけど、同時にもし誰かを好きになれるなら燈子を好きになりたいと思うようになってきている点も作用しているのだろうね。
自分と同じように特別なんて無い人だと思っていたのに、勝手に侑を好きになってどんどん変わっていく燈子。その姿は侑からすればとてもズルいものだけど、自分もこんな風に代わりたいと思わせるような姿でもある。
だから、まだ「特別」を感じられない侑は燈子を通して自分を変えようとしている。それが結果的に燈子の接近を許してしまうという凄まじいバランスで話が構成されている

百合モノにおいて男をどのように絡ませるか、それとも絡ませないのかという点は一つの問題点となるのだけど、本作においては槙の存在はどのように影響してくるのかな?
侑と燈子のキスを目撃してしまった彼は侑達に探りを入れだす。けれどそれは積極的に関わろうとするものではなく、それぞれがどのような想いを抱えているかを確認する為のもの
槙に痛い所を突かれた沙弥香は珍しく渋い表情を見せた。槙の目撃によって関係が知れ渡る未来を想像した侑は燈子が傷つくことを恐れた。どちらも槙が関わらなければ見えてこなかった表情
これによって侑は果たして自分の態度に何も特別なものなんて含まれていないという確信が持てなくなってしまう

そして劇の準備を前にして揺れだす燈子、侑、沙弥香の様子が非常に印象的
沙弥香は燈子が隠す裏側を何となく察している。けれど、燈子が「特別」であろうとするならその虚像を尊重する
「特別」に価値を見いだせていない侑はそんな燈子の心の内側を心配して辞めさせようとする
対して燈子は侑に心配されようと「特別」であることは辞められない。「特別」の為なら、「普通の自分」を受け入れてくれる侑さえも置いていこうとする

この時の侑の選択はとてもズルいもの。
燈子を好きになりたいと思い、その中で自分を変えたいと思っていたのに、燈子の隣りにいるためにその想いに嘘を付き蓋をするような誓いを発してしまう。
自分に対しても、燈子に対してもズルい選択。けれど、そんな道を選ぶこと事態、既に燈子を好きになりかけている現れのような気もするけど

同時に燈子の侑への接し方もズルい
姉の死によって姉のような「特別」にならなくてはと思い自分をがんじがらめにして生きてきた燈子にとって、想いによって縛られる辛さは知っているはず。けれど、自分の心地よさのために侑から侑自身を束縛するような言葉を引き出し、更にそれを上塗りするように自分だけは「好きだよ」と告げる
それを自覚的にやっているのだから恐ろしい

変わり始めた侑が自分の想いを封印することによって成立してしまった二人の関係。それでも発揮されるだろう侑の優しさが、今後燈子にどのような影響を齎すことになるのだろう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2019年3月6日
読了日 : 2019年3月5日
本棚登録日 : 2018年12月31日

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