惑星のさみだれ (6) (ヤングキングコミックス)

著者 :
  • 少年画報社 (2008年10月29日発売)
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本棚登録 : 667
感想 : 22
5

この巻の冒頭で描かれるのはアニムスと共闘しているように見える太陽の話。
親の再婚によって家の中に居場所を失ってしまった彼は世界なんて滅びてしまえと願っていた少年。それだけならよくある話で終わってしまうが、そこに獣の騎士でありながら仲間から危険視されているロキが現れたことで太陽の生活が大きく変わっていく流れが描かれる
まだまだ彼の内面の変化は起きていないけれど、一人で食べるステーキでは美味しさも不味さも感じられなかった太陽。けれど、夕日や南雲と一緒に食べたラーメンは好きだと思えた変化は好き。

そしてこの巻、というか本作の中盤戦で最高潮と言えるのが第37話から始まる花子と太郎の物語
この二人は性格が全く異なりながらも、ラブコメ的ポジションや長い付き合いによって良い関係だった。でも、それは包容力の在る太郎が歪さを有する花子を守っていたから成立する関係でも有って。

そんな太郎達を含む騎士達に襲いかかるのは騎士型の泥人形。パワーアップした今の騎士達なら倒せる筈の相手でも、仲間が分断されさみだれが全力を出せないなら敵の攻撃を引き付ける役が必要になる。それに太郎が名乗り出るまでは良かったものの、さみだれが吹き飛ばされ、太郎が囮に失敗し……
太郎が事前にランスに望んだ願いを考えればキルが言うようにあの場で太郎が庇う必要はなかったのかもしれない。それでも、そんな事情関係なしに太郎は花子を庇った。それはノイが言うように太郎の勇者性を示す行動だったのかもしれないね
ただ、太郎の死は残された者達に大きな影響を与え……。そこから静かに崩れだす花子の様子はあまりにも悲しい
第37話のカラー絵では太郎と花子の二人で進んだ学校への道、それを第38話では一人で帰る花子。構図はほぼ同じなのにそこに込められた感情が全く異なることが強烈なまでに伝わってきて辛い……

半月に庇われ彼を死なせてしまった夕日。そして今度は直ぐ側に居たのに太郎を守れなかった。その悔しさを抱えたままの彼は黒龍継承の試練で八宵に全く敵わない。それはある意味強さを求める理由の差
守りたい相手を守れなかった悔しさから強さを求めた夕日と、これから誰かを守るために力を欲した八宵。既に自分の気持ちを整理できている八宵は夕日を圧倒する
その差を理解させられた夕日はちょっと情けない。「埋めてくれ…」って……

そんな状況で出現した11体目の泥人形は人の姿をコピーでき、花子の前に太郎の姿で現れる。普通なら花子を更に追い詰めるそれは逆に花子に気持ちの整理をつけさせる展開は印象的
偽物を見たことで太郎の喪失を理解し、その上で自分が太郎から貰ったものを再認識した花子。その勢いのまま髪を切りそれまでの花子から新しい花子に生まれ変わる場面は強烈

同時に他の騎士達も太郎を弔い、そして進むために喪服で泥人形に挑む展開には胸が締め付けられる
今度は全員の力で騎士型の泥人形を追い詰め、トドメは花子が刺した。
そのシーンでは皆が涙を流す。太郎の死を改めて悼むように。
ノイが言うように、太郎は皆から愛されていた人物だったんだなぁ……

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2019年6月7日
読了日 : 2019年6月6日
本棚登録日 : 2014年10月31日

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