惑星のさみだれ (7) (ヤングキングコミックス)

著者 :
  • 少年画報社 (2009年4月30日発売)
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本棚登録 : 647
感想 : 23
5

半月が登場した第2巻の頃から大人と子供という視点の違いは意識して描かれてきたわけだけど、この巻を持ってその構図は大成したように思える
半月を前にしていた頃の夕日や三日月はまだまだ子供だった。しかし、太陽など年下組が登場し関わるようになった頃から、夕日や三日月は彼らに対して年上の大人として振る舞うようになってくる
それは含蓄のある言葉を言うとか、頼りになるとか、そういうのではなくて大人として子供に対して人生は楽しいのだと見せつけるような在り方であるのがとてもいい
特に半月から受け継いだあのダサカッコイイヒーローポーズを二人がするシーンは惚れ惚れとするね

第42話で再び激突した夕日と三日月。以前戦った際は夕日の心と半月から受け継いだ技が一体となっていなかった為に三日月に全く及ばなかった
それが今回は戦いを心の底から楽しめるように成り、技を使うために前へ出て戦った。
それらが良い変化となり遂に三日月に打ち勝った夕日。彼の成長を感じられた描写だった

そしてこの巻のメインとなるのは満を持しての太陽少年
登場当初から影のある少年として描かれ、背景には家庭内に居場所がないという事情も描かれた
周囲が彼に対して見守る姿勢を取った事も関係しているけど、太陽の境遇に積極的に寄り添ってくれるものは居なかった。
そこに現れたのが人に擬態し人を理解しようとする11体目の泥人形
11体目は太陽の境遇を共有してしまった。その為に太陽は自分の家庭の可怪しさを外側から見て、尚更絶望してしまった

そんな中で太陽が遭遇するのは倒しても倒しても溢れるほどに復活する10体目の泥人形。そして大人として太陽に接する夕日や三日月、同年代の昴と雪待
何度も復活しその度に強くなっていく泥人形は、太陽が家族に期待しては裏切られ、いつの間にか家族どころか世界にすら絶望してしまった心の内の比喩であるように感じられてしまう
だからこそ、同時期に太陽に感情豊かに接する夕日達の態度が彼にとっては硬くなった心を溶かすきっかけとなっていく

でも、太陽に最も影響を与えたのはやっぱり雪待なのかな?
何度も世界の破滅を望んできた太陽は死んでもいいなんて思えてしまう、大人しくしてた方が苦しまないなんて言えてしまう
それを雪待はぶん殴って、叱って、その上で「生きて帰って ラーメン食べるよ みんなで食べる」と太陽の心に最も響いた経験を呼び覚ますような言葉をぶつける
そこからの太陽の変化は目覚ましい
ただ、時間を戻すだけだった「因果乱流」を怪我を治すために使えるようになり、その為にもしかして太郎を助けられたのではとショックを受ける
その衝撃は凄まじい程に太陽に響く。また、先代のフクロウの騎士の顛末を聞き、更にロキの言葉で自分は未来が欲しかったのだと気付いた太陽は走り出す。

家に潜んでいた10体目を倒した太陽の行動には思わず感動してしまいそうになる
あれ程絶望していた家を守るため、そして自分から居場所を奪った赤ん坊を守った。
10体目を倒した後で太陽は「何をすべきか 何がしたいかなんて …そんなのわからないよ わかるわけないだろ…」とロキに返す。それでも彼はアニムスに逆らい10体目を倒した。その変化はとても尊いものであるように思えた


そういや仕方ないとはいえ、八宵の告白を聞かなかったフリをする夕日はちょっと……というかかなり格好悪かったよ?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2019年6月11日
読了日 : 2019年6月9日
本棚登録日 : 2014年10月31日

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