古本で購入。
世界史・日本史で名前を見るものの、その実態を全く知られていない“幻の国”渤海。
しかし渤海と王朝文化華やかなりし日本との間には、約200年間にわたる平和で友好的な交流があった。
「新しい日本海時代」「環日本海時代」の到来を前に、千年前にあった対岸の国との国際交流を見つめ直すこと。
また東アジアの歴史を見る視界を東へ北へと広げ、そこに確かに存在した渤海国と、そこから日本へやって来た渤海使たちにスポットライトを当てること。
これらが本書のテーマとなっている。
中国東北部の荒涼たる草原地帯に成立して、唐の制度・文化を受容して豊かな文化国家を築き、ついには唐から「海東の盛国」とその繁栄を羨まれた国。
後に契丹の侵攻により徹底的な破壊を受け、文書・構築物の一切が失われたため、その姿をうかがうには日本・中国に残された史書などの文書や少しずつ出始めている考古学の成果によるしかない。
日本・渤海の交流は、まず渤海からの軍事同盟的提携の要請から始まる。それは対立していた新羅を牽制するための、遠交近攻策であった。
しかし後には「渤海・毛皮⇔日本・繊維製品」という貿易を主眼とした交流に変わり、日本側の饗応の中で、双方の国選りすぐりの文人たちが互いに漢詩の出来栄えを競い合った。
以前から渤海という国は気になっていた。
中国から見て辺境とは言えかなりの版図を有しているにもかかわらず、ほとんどまともな説明がされていなかったからだ。
そこで本書を読んでみたわけだが、日本側が「宗主国」として振る舞っていたとは言え、交流の平和さ、互いの信頼関係など、大袈裟に言えば一種の奇跡を見るような思いがする。
季節風に乗って日本海を行き来する日渤の船と人々を知るためのいい入門書。
この本が出たのが1992年。現在どこまで研究が進んでいるのか気になるところ。
- 感想投稿日 : 2013年8月16日
- 読了日 : 2013年8月16日
- 本棚登録日 : 2013年8月16日
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