ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2011年12月5日発売)
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アスペルガー症候群の天才ハッカー、リスベット・サランデルは因縁の父を追い詰め、次には国家的陰謀の犠牲者として狙われる。一方のジャーナリスト、ミカエルは殺された 同僚のための調査を続けるうちに「ザラ」に行き着く。両者の行き着く先は?

先日読んだ「ドラゴンタトゥーの女」が面白くて続編を読んでいったのですが、ミレニアムの2,3は続き物の話として読んだ方がよさそう。しかし(スウェーデンでは)一世を風靡したミステリだけあって読ませます。
2の「火と戯れる女」では主人公、リスベットが因縁の父を追い、その過去が少しずつ明らかになってきます。ここら辺はもう、この親父こそミレニアムシリーズのラスボスだろう、という展開なのですが、3「眠れる女と狂卓の騎士」ではあっさり殺されて本当の黒幕が明らかになってきます。リスベットをめぐる陰謀の輪や父親との因縁もここで明らかになり、最後は息もつかせぬ法廷合戦で盛り上がり、痛快な読後感を楽しめました。まあその先の読めなさとダイナミックな展開で本当に描きたかったことを見事に書き切ったのだな、という印象でした。面白かったです。

しかし本当に、作者がここまで書いて若くして亡くなってしまったのが残念でなりませんね。作者のスティーグ・ラーソンは元ジャーナリスト。スウェーデンとその周辺の社会が抱えるさまざまな問題を、本作を通して暴き出していきます。特に女性に対する暴力や差別がそのメインテーマとなっていて、全編を通じてマッチョな男性社会を告発していきます。細部に至るまで描写が行き届いたこれらの社会問題は、作者が綿密に取材を重ねてきたことを思わせて、ジャーナリストではできなかった仕事を小説という形で結晶化させたのでしょうか。根底に人としての自由と尊厳を簡単にカタに嵌めようとする国家や社会という集団への怒りが熱く流れているのがよく伝わってきました。
ということで読み応えも面白さも抜群の北欧ミステリーは一応ここまで。この先は別の作者が続きを書いていますが、読むかどうかは悩みどころです。
あと、ミカエルくんが特に必要性もなくモテモテなのは鼻につきます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月18日
読了日 : 2023年8月18日
本棚登録日 : 2023年8月18日

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