鴨川食堂ひっこし (小学館文庫 か 38-13)

著者 :
  • 小学館 (2023年3月7日発売)
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感想 : 23
3

シリーズ第10弾にして、突然の立ち退き話。
どうしてこの展開に?
スマホの地図で見てみると、鴨川食堂はこの辺りかなーという界隈には、確かに宿泊施設がたくさんできている。
仏具店などが並ぶ通りの、しもた屋風の建物・・・という描写がそぐわない景色の街並みになってきたのかもしれない。
というか、持ち家だと思っていたら、店舗付き住宅の賃貸だったんですね。
シリーズが終わってしまうのかと一瞬思ったけれど、そうでもなさそう。
郊外の方に移ることになったので、生活の描写なんかも変わりそうですね。

移転のバタバタで、飛び込みのお客さんの依頼は無し。
身内の食探しが3件。

第一話「紅白餅」は、流の依頼で、こいしが母・掬子(きくこ)の秘密を探る。
自分だったら、そのままにしておく。家族から誤解を受けるようなことはしないと、こいしはハッキリ言う。
さて、こいしはこういう考え方なのだ。
私は第三話へのつながりが気になる。

第二話「ボルシチ」は、常連さん、来栖妙(くるす たえ)の依頼。いい話でした。
これからはご近所さん。

第三話「カレーうどん」は、なんと一巻からちらほら名前は出ていた、福村浩(ふくむら ひろし)の依頼。
こいしと付き合っているらしいということは分かっていたが、途中から影が薄くなった。
・・・と思ったら、故郷に帰れないそんな理由が・・・
この話を、私はどう読んだらいいのか分からなくて困った。
けじめをつけない罪な男ではありませんか。
こいしは、どう思っているのだろう?
流さんは浩を責めることはしない。
流さんがいいと思っているなら良いのかな?
時効・・・ですか?
確かに、もう待たなくてもいいかと思い始めたらしき人に、こっちで食堂やることになりました、みたいなことを報告するのもな・・・新たな紛争の種だ。

食の探偵が3件だけの代わりに、お父ちゃん、こいしそれぞれの、おひとりさま食べ歩きの話が載っている。
実在のお店の紹介だけれど、二人のいつもの口調で語られるとガイド本っぽさはなく、紛れもなく小説である。
特に、流さんと掬子さんの、生涯でただ一度の贅沢、『豪華客船のハンバーガー』は、しんみりしました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月19日
読了日 : 2023年9月19日
本棚登録日 : 2023年9月19日

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