タイトルだけでもう素敵だ。
およそ六十年ほど前に書かれたものだと思うが、全然古さを感じない。
世界が平均化してしまった現在よりも、色濃く異国を感じられ、味わい深い。
流行りの美食、というものではなく、土地に根ざした伝統的な料理が紹介されているためかもしれない。
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』
白系ロシア人の、マダム・カレンスキーのアパートに部屋を借りた。
せまくて細くて、中庭に向かった窓があいた台所で、マダムと食事をした。
フランス語のレッスンを取るより私と話している方が勉強になりますよ、とマダム。
『また来てまた見てまた食べました』
初めてパリに来たのは昭和26年。
フランス人は楽しそうに食事をする。
『よく食べよく歌え』
モンマルトルは下町の人情あふれるところ。
仕事が済んだ後の夜食とおしゃべりは一番の心がほぐれるなぐさみ。
『外は木枯 内はフウフウ』
寒い季節は西洋でも鍋や煮込み料理があたたまる。
スイスでは「ブルギニヨン」と、家庭では「チーズフォンデュ」
パリの冬は「グラティネ(オニオングラタンスープ)」、家庭では「ポトフ」南のマルセイユでは「ブイヤベース」
『西部劇とショパンと豆と』
西部劇に出てくる男たちが食べている、ポークアンドビーンズに憧れ、ショパンの伝記映画の中で豆をむく女性が素敵だと思ってグリーンピースが好きになった。感化されやすい。
『紅茶のみのみお菓子を食べて』
フランスではお菓子の歴史は古く、店頭に並ぶお菓子によって季節を実感する。
『作る阿呆に食べる阿呆』
パリに住んでいた頃、日本食が食べたくてお客に来てくれた日本人の偉い人たちにも、ひどい失敗料理をたくさん出してしまった。
『とまとはむぽてと』
トマトも果物も、汁を垂らしてかぶり付くのがおいしい。
フランスでは、ジャンボンとよばれるハムをよく食べた。
じゃがいもは戦時中さんざん食べたが今でも好き。
『フランスの料理学校』
「コルドンブルー」という料理学校へ3週間通った。
『わが家の食い気についての一考察』
両親、姉、弟二人の六人家族で育った。
父は大食いで美食家。母は父とは正反対で、薄味好み。
姉は料理がきらい。
上の弟は味に無頓着、下の弟は食通で、どちらも妻は大変。
母方のおばあちゃんは料理好きで、懐石料理一式を自分で作れた。
『私のゆくところに料理がある』
料理の随筆を書きはじめてから、料理上手と思われたり言われたりすることが増えたが、自分では上手とは思わず。食べる事に熱心なのだ。
この十年内は、国外も国内も旅行し、旅の思い出は食べ物とつながっていることが多い。
- 感想投稿日 : 2023年12月26日
- 読了日 : 2023年12月26日
- 本棚登録日 : 2023年12月26日
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