「はじめに」には、
『随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました』
と書かれている。
ちょっと待ってーーーーー!
何かの意図を持って面白いところを抜き出して切り貼りされてたりしたら、それで「人となり」なんか判断される文豪は気の毒、とちょっと思いましたが・・・
読み終わって、自分が今まで作品を読んだことのある文豪に対してもない文豪に対しても、何か先入観を抱えてしまったのではないかと気がかりです。
・太宰の、芥川賞への執念は有名。
作品はいくつか読んでいるから、彼のぐちぐちウジウジにはもう慣れている。
いつもの太宰。
・中原中也の罵詈雑言は、その場限りのガス抜きみたいに思う。
写真では結構なイケメンなのに、口と酒癖がとびきり悪いらしい。
日記の中も罵詈雑言でいっぱい。夢の中でもバリってるかも。
・太宰の死後に書かれた坂口安吾の文は、悪口というよりは、「なんで死んじまったんだよう〜!お前のそういうところがダメなんだよ!」という、友情の裏返し表現な気がする。
私の中で、安吾株アップ。
・夏目漱石は、家族からは怖がられていたようだが、家族に当たるくらいしかできない小心が可愛いと思う。
・永井荷風の「菊池寛だいっきらい」は徹底している。
大人げない偏屈ジジイである。
・谷崎潤一郎VS佐藤春夫の手紙のやりとりは、小説のような読み応えあり。
谷崎は佐藤より6つ年上。
いい意味でも悪い意味でも「オトナ」と感じる。
佐藤の言い訳っぽい書き振りは太宰と同類かなと感じたけれど、卑屈感とねちっこさがいまひとつ足りない。
この戦いは長年かけて良いところに落ち着いたようなので、一冊の結びとしては良かったと思う。
それとは別に、驚いたのが『滑稽新聞』や『スコブル』という、風刺ゴシップ誌での、文豪のネタにされっぷり。
文豪ネタのアニメが出たときに「冒涜!」と騒いだ人たちもいたようだけど、あんなもんではない。
『文藝春秋』大正13年に載った「文壇諸家価値調査票」というのもなかなかに酷い。
財産→病気、とか、好きな女→妻君(人の)・・・などと書かれている。
訴えてもいいレベル。
一、太宰治の章
二、中原中也の章
三、無頼派×志賀直哉の章
四、夏目漱石の章
五、菊池寛×文藝時代の章
六、永井荷風×菊池寛の章
七、宮武外骨の章
八、谷崎潤一郎×佐藤春夫の章
- 感想投稿日 : 2021年9月25日
- 読了日 : 2021年9月25日
- 本棚登録日 : 2021年9月25日
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