この本でいうところの「第二の視覚系」と「閾下知覚」についての論文サーベイのために読んだ。そのため、とりあえず第4講と第6講だけ。
(4講)いわゆる視覚野を順に昇っていく経路だけでは説明できない「盲視」という現象は、この本の出版から20年以上の間に解剖学・生理学的に調べられてきていて、この本では仮説の域を出ないとしている「第二の視覚系」はほとんど確信できるところまできたと私は思う。盲視に関する観察や実験結果は、はじめ知ったときは摩訶不思議に思えた(今もだけど)。
(6講)この部分を読めただけでも自分にとって大きな価値があった。自覚できないレベル(閾下)の刺激が知覚に干渉する、さらには見えないのに特徴を答えられるという報告は、刺激の検出→特徴の解析→意味の認知という、まあ妥当でわかりやすい情報処理の流れを仮定したうえでは何だそりゃとなるだろう。ならば検出と特徴の解析はパラレルになのかと考えることができる。そこで上に述べた「第二の視覚系」の存在が当てはまる。前述のとおり、この20年で解剖学・生理学的な知見も集まってきている今では、これを否定する人もまずいないと思う。
この本では他にも、有名な「サブリミナル効果」のように、無自覚の感覚入力によって意志すら操られうるということについて述べているようだ。この部分については、視覚心理物理や神経科学に興味がない、難しくてわからないという方でも驚きと発見を得られるのではないだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
視覚
- 感想投稿日 : 2019年6月30日
- 読了日 : 2022年4月1日
- 本棚登録日 : 2019年6月30日
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