ホンモノの思考力 ―口ぐせで鍛える論理の技術 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社 (2003年7月17日発売)
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感想 : 75
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日本人は論理性が不足している。その原因は「二項対立」「型」「背伸び」がそれぞれ足りていないせいだ。

フランス人がやたら使用する「理由は三つある」などという言葉から日本人には論理性の「型」が必要だと著者は断言している。日本の教育界では「型」を使う事で考えが均一になり個性を壊す事になると嫌われてきたのだが、そういった流れから発生した押し付けの自由は本嫌いや作文嫌いを大量生産しただけだった。著者のいう「型」とは出発点としての組み立ての基準となるものであり固定観念を植え付ける類いのものではない。

この意見に多いに賛同する。時として自由は人を縛りつける。それよりも「型」を与え作られたものから「型」を取りそこに残ったものを個性と評価するべきだと思う。

この「型」を使い論理的に意見を述べるためには前半で書かれている「二項対立」が必要になる。「二項対立」とはイエスとノー、プラスとマイナス、顕在と潜在といったように物事の相反する二つの側面の事だ。あらゆる事柄は対立する「二項対立」の間にある。この「二項対立」を日本人は長い間苦手としてきた。それは禅の精神にそったもので生と死、自分と他者、イエスとノーをはっきりとは区別せず肯定と否定を区別しない。悪いとは言わないがこれでは他人と同じような意見を持つばかりで自己主張もできない。それよりも一つのものさしとして「二項対立」を意識しておく事で論理的に考えられるようになるだろう。

最終章の『背伸び」の部分はおまけのようなものと思っている。おそらくフランス式に三つと言ってみたかっただけではないか。などと言っては筆者に怒られそうだが。

最後に、この本に書かれている「型」はこれを使わなければ論理的な思考ができないわけではないし使用する「型」も全く同じものである必要はない。ここで用意されている「型」よりも優れた「型」を持っている場合はそれを使えばいいのだが、そのような人には本書は不要とも言える。そうでない我々は技術的な訓練として「型」を空で言える程度には練習する必要があるだろう。

思考するというのは、言い換えれば自己主張するということだ。人として生まれてきたからには多いに主張していきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年2月6日
読了日 : 2013年9月5日
本棚登録日 : 2012年2月6日

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