ずっと思い描いていたキャリアを断たれてしまった人物が、新天地で再生を遂げていく様子を楽しめる評価の高い小説なのは承知の上で、自分には読み進める気力が湧かず58ページで読むのをやめました。
他の本のレビューにも書いたことがあるけれど、自分が苦手な性格の人物が主要キャラとして描かれていると、その時点で読む気が失せてしまう。もちろんその人物が徐々に改心していく演出なのだなということは承知の上なのだけど、最初に性格が悪い時点でもう無理なのです。
本書の場合は、ヒロイン役である帝都テレビのディレクターの稲葉リカがそれにあたり、典型的なマスゴミ仕事のプライドを捨てきれない人物として描かれており、前半の不快な言動が目に余る。
空井をはじめ、広報室のメンバーは面白そうなキャラクターが揃っているのだけど、稲葉リカの描写を理由に読むのをやめました。
これは自分の忍耐力がないせいだけど、昔はそういう本も最後まで読んでいたことを考えると、これほどにスパッと中断できるようになった理由を考えるに、
・インターネットやSNSで自分にとって心地よい情報だけを取り入れることができ、その情報量だけで十分すぎる状態になってしまったこと。
・終身雇用の終焉に代表されるように、「じっと耐え忍べばいつか花開く」という価値観が昔のものとなり、今時の人生論としても「嫌な奴とは距離を置いてOK」という風潮になっていること。
・小説以外にも無料やサブスクで楽しめる漫画やアニメ、YouTube動画などが氾濫している現代において、たとえその小説が後半大盛り上がりしようとも、そのためにわざわざ嫌な奴の描写を読まされるのは勘弁してほしいという考え方に変容してきたこと。
などが理由かなぁと思う。最近のエンタメ作品はそういう風潮をふまえた「主要キャラは良い人で固める」感じの話が増えてきているように感じるけれどどうだろうか。
- 感想投稿日 : 2022年11月2日
- 読了日 : 2022年11月2日
- 本棚登録日 : 2022年11月2日
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