コンピュータが小説を書く日: AI作家に「賞」は取れるか

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2016年11月1日発売)
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感想 : 28
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星新一賞にコンピュータで生成した小説を応募するまでのプロジェクトの奮闘を赤裸々に書き上げたもの。
奇しくも現在、自然言語処理に関して悩む部分もあり、こういった活用方法もあるなと感じ、読了してみた。
本プロジェクトは2011年から2016年までの約5年間の軌跡であった。
また、同じ時期に著者が参加されていた東ロボプロジェクトへの言及もある。(6章)
これは昨年発売された東ロボプロジェクト本での言及が詳細である。

さて、AI作家に賞が取れるかという副題であるが、巻末に著者の回答がある。研究者らしい論理的な回答だと思った。
やはり自然言語処理における諸々はまだまだ非常に未発達な部分があり、手を出してみようかと思ったことも思いとどまるに至った。

要素技術が進歩すれば、その組み合わせにより、できることも増えるだろうが、それがまだ非常に遠いプロセスであるように思える。

また、著者が中で言及する、良い小説を書くにあたって、「たくさんの文章を読む」ことを肯定しつつも、「たくさんの文章を書く」ことには懐疑的だった点もなるほどと思った。たしかにただやみくもに書けば良いわけではない。
文章を向上させる点は読みやすい点と、思わぬ展開、ストーリーだと思うが、前者においてはある程度メソッドがある。一方で後者はまさしく「創造」されるもので、機械学習のフレームワークでは厳しそうだ。
広大な言語空間を定義したものすごく低い確率に偶然あたった産物で出るなら確率は0ではないが、限りなくゼロに近そう。
本書は2016年に出されたものであるが、そこからさらに3年ほど経過しており、その後の成果を追ってみたいと思わせる良書だった。

■目次
第1章 コンピュータは文章が書けない
第2章 テキストの切り貼りを試す
第3章 構造を導入する
第4章 文章生成器GhostWriter
第5章 『コンピュータが小説を書く日』の舞台裏
第6章 コンピュータは文章が読めない
第7章 応募作品は誰が書いたのか
第8章 応募報告会と反響
第9章 人工知能と創造性
第10章 文章を紡ぐということ
袋とじブック・イン・ブック
第3回日経「星新一賞」応募作品
『コンピュータが小説を書く日』『私の仕事は』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2019年4月30日
読了日 : 2019年4月30日
本棚登録日 : 2019年4月30日

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