シェアリングエコノミー

  • 日経BP (2016年11月17日発売)
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本書は、NYUの経済学者によって書かれた「シェアリングエコノミー」について初の体系的な解説書。
第1部「原因」では、「シェアリングエコノミー」の定義(著者は「クラウドベース資本主義」とも呼んでいます)、その登場の技術的・社会経済的要因とその波及効果、「シェアリングエコノミー」のプラットフォームが生み出す新たな経済構造、ブロックチェーンによる更なる進化の可能性(これは『ブロック・チェーン・レボリューション』にも言及されてましたね。)等について、解説されています。
第2部「結果」では、4つの経済的影響(「資本の影響力」の増大、規模の経済とローカルな「ネットワーク効果」、多様性の向上による消費の増加、包括的な成長を約束する「経済機会の民主化」)、規制問題、特に労働問題「これからの働き方」が論じられています。

著者は、「シェアリングエコノミー」は、決して目新しいものではなく、「かつて存在した共有体験、自己雇用、コミュニティ内での財貨交換(贈与経済)が、現代のデジタル技術によって復活しつつあるというのが正しい。」(P.15)としており、「贈与経済」と「市場経済」の中間的形態として位置付けています。
また、経済学者であることから、随所に、「情報の非対称性」、「需要側の規模の経済」、「二面的なネットワーク効果」、「スキル偏向的技術進歩」、ロバート・ゴードンの長期停滞、ピケティのr>g、ダグラス・ノースの「制度」、アブナー・グライフのマグレブ商人、『ザ・セカンド・マシン・エイジ』等経済学のキーワードが出てきて、「サンフランシスコでは、低所得地域ほどP2P自動車レンタルの利用率が高い傾向にある⇒低所得家計ほど消費者余剰の恩恵に預かれる」等のいくつかの実証結果も紹介されています。
最後に、著者は基本的にはポジティブな立場ですが、「シェアリングエコノミー」化後の世界の「これからの働き方」について、社会的セーフティネット問題等の課題を指摘し、「力を得た小規模企業家の世界」と「権利を奪われた怠け者の世界」のどちらの未来になるかは、「今後10年間で行う選択によって、どちらが優勢になるかが決まるだろう。」(P.349)としています。

書評:
「クラウドベース資本主義」は始まっている
――書評『シェアリングエコノミー』
http://www.dhbr.net/articles/-/4596 

1/26ビジネスウィーク記事
“The $99 Billion Idea: How Uber and Airbnb Won” https://www.bloomberg.com/features/2017-uber-airbnb-99-billion-idea/   
シェリング・エコノミーの2トップをプラットフォームに飛躍させた2つの戦略(“The Growth Hacker”、”Travis’s Law”)について述べられています。

現在の「シェアリングエコノミー」(クラウドソーシング)の暗黒面↓
「まるで「道具扱い」、買い叩かれるクラウドワーカー【フリーランスの光と影・2】」
https://www.bengo4.com/c_5/c_1629/n_5697/

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: IT
感想投稿日 : 2017年2月13日
読了日 : 2017年2月13日
本棚登録日 : 2017年2月13日

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