いしかわじゅん氏を初めて知ったのはNHKのBSマンガ夜話でレギュラーコメンテーターとして出演しているのを観た時だ。その時のマンガに対する深い洞察と実作家としての自らの経験に基づいた漫画家のその時の心理状態の分析など、今まで単純にマンガを読んでいた自分にとってものすごい世界を見せて貰ったという驚きがあり、以来この番組に夢中なのだが、そのいしかわが本を出したのを本屋で見て即買いしたのが本書である。
まず印象的だったのは選択がマニアックで結構知らないマンガが多かったのが残念である。エッセイなので作者の好みに従った選択をするのは是であるからこれに関しては異論はないのでただひたすら残念がるしかないのだが、内容的には確かにBSマンガ夜話に匹敵する話はあるものの、いささか踏込みが甘い。
考えるに、マンガ夜話におけるいしかわのコメントはやはり論者である夏目や岡田の鋭いコメントとマンガをこよなく愛するゲストらのコメント・問答が織り成す相乗効果から発するわけで1人が思索に耽って思い思いの文章を綴るエッセイでは表面を撫でるまで(それでも一般的に観てかなりディープに踏み込んではいるがあの番組と比してはという意味で)にしか達していないのだ。
あの域に達したマンガ評論エッセイはやはりBSマンガ夜話を編集した新書しかないのかもしれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2020年7月6日
- 読了日 : 2020年7月5日
- 本棚登録日 : 2020年7月5日
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