ネコババのいる町で (文春文庫 た 32-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (1993年3月10日発売)
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本棚登録 : 78
感想 : 10
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芥川賞をとったので純文学として認識されているようだが、一般小説かな。

実家の遺産、妻、仕事、全てを失った亥一郎は、競艇場までの道の掃除で、なんとか日々を生きながらえている。ある日掃除をしていると、目の前に高校生くらいの子供を連れた女性が。それは、幼馴染で、一度は結婚した弓子であった。弓子は、小さい頃から亥一郎の実家に入り浸り、父の会社に就職、副社長であった亥一郎と結婚したのだが…(『神の落し子』。

芥川賞の表題作以外の情報があまりなさそうなので、一番面白かった2作目を紹介する。大河ドラマだね。

表題作は大森の祖母、叔母、祖母の妹の住む昔ながらの家に、母親の勝手で送り込まれる少女の話。偶然にも、なんか直前に読んだ本と、住所が若干違うだけで似たような設定だ。育ての親となる祖母や叔母が意地悪なのかと思いきや、がさつなだけで親切なあたりも本当に似ている。

もう一つは、離婚した妻を近所で見かける話。3作とも、書き出しの段階から過去の記憶に戻るという話であるが、やっぱり一番面白いのは、2本目の『神の落し子』である。あとの作品も記憶に残るタイプではなるものの、琴線に触れるというところまでいかない。

全体に文章の息継ぎがうまく出来ていなくて
"〇〇は「□□」と言い、✕✕は「△△」と答え、〇〇が「☆☆」と言って、✕✕は「…"
と1ページ以上に渡ってマルのない文章が続いたり、"〇〇はXXをした。こうこうそうあって、XXをしたのだ" というような妙な反復がある文章は、古いブンガクを踏襲しているのか、そういう読みにくいゲージツをやられているのか、若干疑問に残る。良い文章とは思えなかった。

また、全体に登場人物を突き放し、好きになりにくい設定にしているのは、この作者の性格なのであろう。だったら、もっと悪い人なんかが出てきても良かったと思う。だいたいみんないい人なのがなあ。

悪くない。でも、薦めるかって言われると、微妙。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドラマ
感想投稿日 : 2020年7月14日
読了日 : 2020年7月14日
本棚登録日 : 2020年7月14日

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