演歌の虫 (文春文庫 や 8-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (1988年2月1日発売)
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本棚登録 : 13
感想 : 1
4

男女間の駆け引きとしがらみを描いた短編4つ。思っていたのとは違い、なかなか重みのある作品群。

表題作は、仕事の腐れ縁というか同朋による、仕事の楽しさと苦しさを描く。演歌歌手のディレクター(プロデューサーか?)、作詞家、作曲家が業界の不満と3人でそれを打破する夢を語り、心を通わせるが、実は温度差が有ったことが、室さんが亡くなったときにわかってくる…。

あとの3作は、男女の関係が不倫やら二股で首が回らなくなっていく話。ショーモナイと言われればそうだけど、筆致の癖もあり、なかなか重くて読み応えがある。

全体に、最後の「演歌の虫」ではないが、演歌(艶歌)の歌詞を読むような、不思議なねっとり絡みつくような文章が印象的。普通の文が会話だったり、その中に「そうね。」なんて文章になっていない単語が入ってきたりして、他の作家ならイライラするようなポイントが、この人の場合はいい感じのリズムになっている。

初読だったのもあり、最近の作家かな?艶歌っていうのは、ハズシのネタかな?なんて錯覚して読み始めたものの、実際には昭和50年代だった。だったのだが、十分に今でも楽しめる話だ。

未来に置いても、古典として残っていく価値の有る作品ではないかと思う。
あとからわかったが、本人の体験(作詞家、銀座のママ、スポーツ記者)的なものが多く含まれている、私小説の部分が多いのだな。そう言われると重みのあるのも納得行く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドラマ
感想投稿日 : 2018年3月15日
読了日 : 2018年3月14日
本棚登録日 : 2018年3月14日

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