山海経 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社 (1994年1月12日発売)
3.63
  • (24)
  • (22)
  • (61)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 489
感想 : 36
4

袁珂『中国の神話伝説 上』を読んでいたとき、『山海経』を読んでいたらもっと楽しめただろうなとちょっぴり後悔した。

中国では古代より奇々怪々な怪物や妖怪の物語には事欠かない。その中でも、おそらく最古と思われる謎の書物が『山海経』。
とはいえ『山海経』には物語もあるにはあるけれど、大方はその土地に住む怪物や妖怪の名前と特徴が淡々と書き連ねられている図鑑のような書物である。なかなか面白い。

私が『中国の神話伝説 上』を読んだとき、最初に驚いたのが中国で古くから信仰された仙女、女神の西王母の姿。西王母といえば『十二国記』(作者:小野不由美)に登場した女神のイメージがあったので、まさか西王母が仙女ではなく半神半獣だとは思わなかった。
『山海経』では「西王母はその状、人のようで豹の尾、虎の歯でよく嘯き、おどろの髪に玉の簪をのせ、天の厲と五残を司る」と記されている。衝撃。

また私は黄帝と神農の争いなど中国の古代神話に興味があるので、刑天がある時、帝(黃帝とされる)と神の座を争って戦ったという物語は大変興味深かった。刑天は首を切られて常羊の山に葬られるのだが、その後「乳を目となし臍をば口となし、干と戚をもって舞った」と『山海経』には奇妙な怪物の絵とともに記されている。
袁珂は、刑天を神農(炎帝)の臣下として、古代の黄帝と神農の争いに関連した戦いを描いたものだと考察している(『中国文学をつまみ食い』より)。
古代神話の断片をかいま見ることができる『山海経』はやっぱり面白い。そして、古代神話を知るには一度は目を通しておくべき基本となる書物だなと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国 古典・歴史・神話伝説
感想投稿日 : 2024年4月27日
読了日 : 2024年4月27日
本棚登録日 : 2024年4月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする