看守の流儀

著者 :
  • 宝島社 (2019年12月9日発売)
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 この著書を読みたいと思ったのは、先日、ネット配信されていたドラマ「破獄」を鑑賞してからのこと。主演はビートたけし・役名は浦田(刑務所看守長)、佐久間(山田孝之・無期懲役囚)です。先の大戦中、昭和17年に佐久間は秋田刑務所を脱獄し東京小菅刑務所に勤務する浦田に「刑務所は人間扱いされない」秋田刑務所を訴えてもらうために来たという。浦田は警察に通報し、また投獄され脱獄を試みるといった、吉村昭氏の小説を基にドラマ化されている。昭和の脱獄王は実話です。

 そんな時にインスタの写真で、この著書を見かけたのでミステリー小説だと知らずにポチッたのです。刑務所が戦前、戦中の劣悪な場所でなくなっているのは、小説を読まなくてもわかっていた。高い塀の外では、一切語られない真実もあると思いながら読み進めた。

 物語は、加賀刑務所で起きた事件を五話で構成されて、どこに伏線が張られているのか全く注意していなかった。(読書ノートに筋書は書いていますが)勿論、不思議に思うところは何カ所もありました。
 刑務官の仕事は、受刑者の刑期を全うさせるだけでなく、受刑者を更生させる指導も担っています。僕の過去の投稿、「テミスの剣」で「日本の再犯率は60%」「模範囚は仮出所の評価理由ではない」と書きました。特に犯罪を繰り返す人達、隠語で「G」(極道・グレという意味)は要注意だが更生のチャンスは平等に与えられています。日本の各省庁の白書で調べたわけではありませんが、仮出所を果たすことが出来た受刑者の再犯率は極めて少ないのではないかと思います。この小説を通じて刑務官の“必ず更生させる”という矜持を知りました。
 ムムムッ、詳しくは書けませんが、小説の冒頭から元受刑者の刑務所手記『プリズンダイヤリー』の飛ばし読みは禁物ですぞ!
 それに火石司、刑務官では数少ない上級試験合格組の看守長は加賀刑務所内での切れ者。ある刑務官が叫んだ「出た!火石マジック」言動は的確にして適切、火石刑務官の活躍はきらりと光る。思わず僕はニンマリと微笑んだ。確かにミステリー小説らしい結末だった。
 実におもしろい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー(推理小説)
感想投稿日 : 2020年8月2日
読了日 : 2020年8月2日
本棚登録日 : 2020年2月12日

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