<font color=red><b>【コレっぽっちも癒されない人へ】</b></font><br> 人間は社会性動物だと言われる。その真偽はともかく「これ言ったら(やったら)気まずいよな……」という理由で何かを断念することはほとんどの人間にあるだろう。世界にはタブーがあり、オカシイなぁとは思っているのだがみんなが良いと言っている所にわざわざ歯向かいたくもない『世間様の共通意識』がある。<br>
ところが著者である辛酸なめ子の筆は、むしろそういった危険な聖域で冴える。<br>
なにより丁寧かつ冷静でありながら毒を含んだその文章は、例えるなら内向的に、かつより因業度の増したナンシー関。はぐれ者怨念系と言っても過言ではない。<br>
その劣等感と疎外感を逆に武器にして女子アナ、精神世界、ボランティア、大物タレントなど他の人間が手出ししたがらない事象に急角度でえぐりこむ姿は、『いっぱしの知識人』を気取ってというよりは『文化の違う民族の祭りを眺めている観光客』。唖然とたたずむ様まで連想させるほどに、著者はどの世界にもなじめないまま流浪する。そしてその怪しさにとどめをさすのがヤバイ思念が漏れ出しているようなさし絵。全てひっくるめて、うかつな感想を言えば呪われそうなただならぬ凄みがこの本にはある。(M)
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BOOK
- 感想投稿日 : 2005年1月13日
- 本棚登録日 : 2005年1月13日
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