ロイスと歌うパン種

  • 東京創元社 (2019年4月11日発売)
3.53
  • (7)
  • (16)
  • (22)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 210
感想 : 25
2

ちょっと翻訳にぎこちなさを感じて、読み辛い。
主人公がプログラマーで、専門用語なのか、それとも造語なのか、とにかく界隈に詳しくない私にはすんなり入ってこない部分もあり、導入で躓いた。
現実と非現実(創作)の境界がわからない部分が割とあって、“アメリカにはそう言うものがあるのだろうか……? 調べてみても出てこない。”とか、すんなり読み進められなかった。

同著者の『ペナンブラ氏の24時間書店』はこちらでも星4つつけているのですが、同じく現実と非現実が区別し辛いとも書いているので、読んでいく内に解消されるかもしれません。著者の持ち味なのかも。

主人公は食に疎い家庭に育った食に疎い人。
何だか読んでいて腹が立ってくるレベル。これは逆に私が食べること大好きだからかも。

時間はあったにも拘らず、どうしても一気に読み進めることができず、図書館の返却期限を延長したのに、更にそこから一週間経っても半分も読めていなかった。

好きな登場人物がいないせいかも。いつも誰かしらお気に入りの登場人物がいると一気読みできる。本作には移入できる人物がいなかった。憧れる人物も。面白いと思える人物も。

時折面白げな何か、片鱗、のようなものを作中に見つけるけれど、深くささらないまま興味が薄れていってしまう。ほぼ義務感に似た感覚で読み進めていった。

皮肉っぽいユーモアが多く散りばめられた一人称の文体。恐らくはこのユーモアが売りなのだけれど、本作ではそれがしつこく感じられた。主に自嘲を含む皮肉っぽさが。これらは個人の好き嫌いに由来したものなので、好きな人は好きだと思う。

他社から譲渡されたスターターで作ったパンで個人ビジネスをスタートさせようと思う主人公。譲渡主に断りを入れないのは筋が通っていない気がするけれど。譲渡主からのメールの返信ばかりが作中に登場するので、ひょっとしたらメールで知らせている可能性はある。寧ろそうでなければこの主人公への評価がまた下がる。

主人公が招待された地下のマーケットは、革新的過ぎて、これが作中で評価されているのか、皮肉なのかわからず読み進める。私個人は、分子ガストロミー的な革新的な料理が苦手。現代アートを理解する感性も持ちあわせていない。なので、これで主人公が成功するのだろうかと疑問を持っている。

大学四年生の時以外卵を割った経験が殆どないと言うのが主人公の食への興味のなさを物語っている。更に付け加えると、両手割りも完璧に習得していない。
そして、プログラミングのことはさっぱりなので、成し遂げたことの偉大さにピンとこず。感動をシェアできなかった。

人の唾液を組み込んだマシン、きちんと殺菌されてるのかが気になって気持ち悪くなった。

アグリッパの章も、菌についての話は何となくわかるものの、それに対するリアクションは狂気と言うのか、ついていけない部分が殆どだった。

いやあ、最終的に不思議な話でした。言いたいことはちょいちょいわかるような気がするんだけど、それこそパンのクラムみたくスカッと穴が空いている感。
人物描写も控えめなので、今回あまり頭に像が浮かばず。
ミトラは山根舞さん、リリーは朴璐美さんで脳内再生されるくらいだったかな。

あと、本書の解説を声優の花澤香菜さんが書かれていて、そこが一番の驚きでしたが、彼女、池澤夏樹さんの御息女だったんですね。初めて知りました。学生時代夏休みの課題図書で読んだなあとか思いつつ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月5日
読了日 : 2020年9月27日
本棚登録日 : 2020年8月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする