久保博司『誤認逮捕』(幻冬舎新書)は日本の警察の誤認逮捕を取り上げる。誤認逮捕の事例が豊富である。日本の警察は誤認逮捕だらけとの印象を受ける。初歩的なミスで誤認逮捕が起きている。民間企業では一般化している業務遂行者と承認者の権限や職責の分離ができていない。そのために犯人と決め付けた見込み捜査が突っ走り、誤認逮捕や冤罪が生じる。自分達の点数稼ぎだけで、市民の人生を破壊しても何とも思っていない。
誤認逮捕された人は、自分はしていないのだから、警察に行って話をすれば分かってもらえると思っていたという。見込み捜査を進める警察は、話を聞くのではなく、犯人にできる材料を見つけることしか考えていない。それならば取り調べには完全黙秘が対策になる。
本書は誤認逮捕が現実に多数起きていることを紹介する点では大きな価値がある書籍である。これに対して、本書の主張にはあまり同意できない。誤認逮捕が起こりうることは認める。しかし、現実の誤認逮捕事例は、「誤認逮捕が起こりうることは仕方がない」で済ませるにはあまりにも杜撰である。まず、そこを改善しなければ話にならない。その改善は民間企業の業務フローが役に立つだろう。
精密司法に対して、米国流の「あっさり起訴して、あっさり無罪」は一つの選択肢になる。しかし、逮捕は人権を大きく制約するものであり、「あっさり逮捕して、あっさり無罪」はあってはならない。誤認逮捕した警察官が同じ目に遭わなければ相互主義とは言えないだろう。誤認逮捕の被害者がその後の人生を自暴自棄になったとしても非難できない。過去を忘れて前向きに頑張って生きることを期待する資格はない。
- 感想投稿日 : 2019年12月16日
- 読了日 : 2019年12月16日
- 本棚登録日 : 2019年12月16日
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