丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方

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  • 祥伝社 (2018年9月1日発売)
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小野正誉『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方』(祥伝社、2018年)は、うどんチェーンの丸亀製麺の好調の理由をまとめた書籍である。味やサービスの質を保つために費用や手間を惜しまない。一方で顧客の無駄はなくす。
「丸亀製麺の売りは、価格の安さとおいしさだ。特にうどんの「打ちたて」の麺が大きな武器。全店に製麺機を置き、100%国産(北海道産)の小麦粉を使って店内で製麺している」(佐藤昌司「客離れの続く丸亀製麺がまた値上げのワケ」プレジデントオンライン2019年6月5日)
丸亀製麺はセントラルキッチンをつくらない。店舗に製麺機を設置する。うどんを店内で作る臨場感が美味しさを高める。これを読んでアジア人の屋台への反応を思い出した。日本人は屋台を不衛生と感じる人が少なくないが、アジア人は逆に材料や調理過程を確認できる屋台の方が食の安心があると考える(川端基夫『消費大陸アジア 巨大市場を読みとく』筑摩書房、2017年)。これに通じるものがある。
味やサービスの向上ならば非効率でも追及する。一方で消費者の負担になる無駄は無なくして効率化する。例えば顧客はネギや天かすを取るために店の中を歩かなければならない。これは無駄である。このため、ネギや天かすの容器を複数個所に置き、顧客が移動する歩数を減らした。また、お冷のピッチャーをテーブルに置き、お代わりをそのまま汲めるようにした。
消費者を無駄に歩かせない。これと逆のことが二子玉川ライズの再開発では行われた。再開発ではバス停を二子玉川駅から離れた場所にした。駅からバス停、バス停から駅に移動するためにはショッピングセンターを通り抜けなければならない。これによって買い物する客が出るという卑怯な手口である。消費者の需要に応えるものではない。
無駄をなくして効率化を進めることは必要である。効率化の行き過ぎや弊害を指摘する声があるが、楽にしたいという思いが文明を発達させてきた。頑張ることを美徳する昭和的なメンタリティは生き辛くするだけである。むしろ何のための効率化であるかが問われる。消費者に負担を押し付ける効率化は批判できる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年11月30日
読了日 : 2019年11月30日
本棚登録日 : 2019年11月30日

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