「自白」はつくられる:冤罪事件に出会った心理学者 (叢書・知を究める)

著者 :
  • ミネルヴァ書房 (2017年2月25日発売)
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浜田寿美男『「自白」はつくられる 冤罪事件に出会った心理学者』(ミネルヴァ書房、2017年)は日本の警察や検察の自白強要によって冤罪が生まれる実態を明らかにする書籍である。甲山事件、帝銀事件、袴田事件など冤罪が主張されている事件を取り上げる。著者は心理学者として自白の供述鑑定を行ってきた。
市民を閉じ込め、集団で問い詰め、何時間も取調べを続けて自白を強要する。警察官には市民に対して高慢で、下劣で、他罰的な精神性がある。他人が自分に怯える事に快感を覚える病んだ精神がある。警察組織は集団主義という点で左翼過激派の総括ごっこ、査問会ごっこと似た者同士である。
この背景には日本人のハチ公体質がある。「ハチ公は確かに、日本人にとって忠誠心のシンボルなのだろうが、忠誠心に対する行きすぎた信仰は危ない。たとえウソをついたり、自らを滅ぼす可能性があったとしても、その時の「主人」に従う体制を作ってしまうからだ」(レジス・アルノー 「日本人の「ハチ公体質」は、不幸しか招かない 上下関係で成り立つような忠誠心は危険だ」2018年6月3日)
日本の警察の取り調べの常識は欧米から見たら非常識である。日本の刑事司法はグローバルスタンダードから逸脱する。欧米から見ると日本はブラックボックスに映る。説明責任が果たされていない。一体何が起きていて、これからどうなるのか、そして何をしているのかが全く分からない。11月29日は「いいにくいことを言う日」である。この問題を言い続ける上で相応しい日である。違法捜査を拒絶せよ、否定せよ、糾弾せよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2019年12月9日
読了日 : 2019年12月9日
本棚登録日 : 2019年12月9日

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