空がレースにみえるとき (ほるぷ海外秀作絵本)

  • ほるぷ出版 (1976年9月20日発売)
3.78
  • (25)
  • (14)
  • (39)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 224
感想 : 30
5

「ビムロスって知ってる?きれいな もやみたいな雲のこと ビムロスの夜は 空がレースにみえる
そんな空 見たことある?
いつもじゃないけど ときどき そんな空があるのよ。」

ああ、私もしかしたら「ビムロスの夜」を知ってるかもしれない。満月の前後、とっぷりと日が暮れ落ちた闇のなか、濃い藍色の空との境に、かろうじて山々の稜線が見極められる時間。その山に向かって、(つまり自宅に向かって)爪先あがりの道をゆるゆると車を走らせていると、月が優しく薄く真綿を引き伸ばしたような雲から見え隠れする。ひどく神秘的で幻想的な空。過ぎてきた何万何億年もの時間を、今この時、目の当たりにしているような不思議な感覚。

バーバラ・クーニーの「空がレースにみえるとき」は、月の魔法にかけられたかのような、ビムロスの夜の静寂と神秘が、青を基調とした美しいグラデーションで描かれている。ストーリーらしいストーリーはないけれど、いえ、だからこそ、いつもと違う特別な夜への思いが伝わってくるんじゃないかしら。

「そして、
かわうそが うたいだし、
かたつむりが 2ひきずつ 木の上にならびはじめ、
庭の木が からだをななめに ゆらしはじめたら、

ごらんなさい、空を!

ほら、きれいなもやがかかってる。
ビムロスが やってきたわ!」

板の上に水彩とパステル、色鉛筆で描かれた挿し絵は、バーバラ・クーニーによる。おぼろで幻想的な世界はこの手法故か。
文はエリノア・L・ホロヴィッツ。翻訳は「聖なる淫者の季節」で知られる詩人の白石かずこさん!

読み終わって本を閉じる時、思 わず、ほおっとため息をついてしまう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・児童書
感想投稿日 : 2022年3月17日
読了日 : 2022年3月17日
本棚登録日 : 2022年3月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする