「ビムロスって知ってる?きれいな もやみたいな雲のこと ビムロスの夜は 空がレースにみえる
そんな空 見たことある?
いつもじゃないけど ときどき そんな空があるのよ。」
ああ、私もしかしたら「ビムロスの夜」を知ってるかもしれない。満月の前後、とっぷりと日が暮れ落ちた闇のなか、濃い藍色の空との境に、かろうじて山々の稜線が見極められる時間。その山に向かって、(つまり自宅に向かって)爪先あがりの道をゆるゆると車を走らせていると、月が優しく薄く真綿を引き伸ばしたような雲から見え隠れする。ひどく神秘的で幻想的な空。過ぎてきた何万何億年もの時間を、今この時、目の当たりにしているような不思議な感覚。
バーバラ・クーニーの「空がレースにみえるとき」は、月の魔法にかけられたかのような、ビムロスの夜の静寂と神秘が、青を基調とした美しいグラデーションで描かれている。ストーリーらしいストーリーはないけれど、いえ、だからこそ、いつもと違う特別な夜への思いが伝わってくるんじゃないかしら。
「そして、
かわうそが うたいだし、
かたつむりが 2ひきずつ 木の上にならびはじめ、
庭の木が からだをななめに ゆらしはじめたら、
ごらんなさい、空を!
ほら、きれいなもやがかかってる。
ビムロスが やってきたわ!」
板の上に水彩とパステル、色鉛筆で描かれた挿し絵は、バーバラ・クーニーによる。おぼろで幻想的な世界はこの手法故か。
文はエリノア・L・ホロヴィッツ。翻訳は「聖なる淫者の季節」で知られる詩人の白石かずこさん!
読み終わって本を閉じる時、思 わず、ほおっとため息をついてしまう。
- 感想投稿日 : 2022年3月17日
- 読了日 : 2022年3月17日
- 本棚登録日 : 2022年3月17日
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