日本防衛の大戦略: 富国強兵からゴルディロックス・コンセンサスまで

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2009年4月1日発売)
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本書はMITの政治学教授である著者が第2次世界大戦以前からの日本の歴史を紐解きながら、この国の戦略に影響を与える様々なグループと各グループの考え、そして戦略構築過程等を詳細に解説した本です。

内容を簡単にまとめると

歴史的経緯)

戦前、大日本主義と小日本主義の2つの戦略論が激しい論争を繰り広げていたが、両者の勢力争いは欧米の人種差別などにより大日本主義の勝利に終わった。
そして敗北の後は、小日本主義の流れをくむ吉田茂とその後継者たちが、大日本主義の流れをくむ勢力と平和主義者達の双方を制御しながら長らく日本を率いてきた。
しかし、小日本主義の流れをくむ戦略によって経済発展に成功した後は、湾岸戦争の屈辱等、様々な要因が重なり安部首相に代表される大日本主義の流れをくむ「普通の国」主義者が実権を握り、今に至っている。

分析)

著者によれば、日本は歴史的にヘッジを多用しており、
例えば現在の場合、日米同盟に強く依存しつつも、東アジア共同体構想の推進する等、安全保障と経済関係を分離させ、万が一の時に備えると言った事をしているとの事です。
また現在、日本は国家戦略に関して変動期に突入しており、今後、他国に脅威を与える程の軍事力は持たない一方、決して侮れない力を持つと言う方向へ国民的合意がなされるのではないかとの事です。



安全保障を含む日本の戦略に関して、その歴史的経緯に基づいて理解を深める事が出来る一冊です。
その為、類書では余り見られない深みのある内容となっており、歴史的経緯の理解の重要性とそれが個人の判断に影響力の強さを理解させてくれます。

読むと必ず得られるものはあると思いますので一読をお勧め致します。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年4月29日
読了日 : 2014年4月29日
本棚登録日 : 2014年4月29日

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