不思議の国ベラルーシ: ナショナリズムから遠く離れて

著者 :
  • 岩波書店 (2004年3月25日発売)
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感想 : 6
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ナショナリズムとは何か?国民と言語の関係は?
それを歴史に翻弄された国、ベラルーシという国から考えていく本です。
ベラルーシ国民は、ロシアとの緩やかな統合を望んでいる人が多い。高齢者は、昔のソ連の復活を望んでいるから、若い人は新しいリーダーであるプーチンに期待をしているから。
ベラルーシ・ナショナリストは自分の国の歴史と向き合い、国民性を育てようとしている。

しかし、ベラルーシは寛容と共生の国民性を持っている。その心が、ナショナリズムという思想によってかき消されるのであれば、それは果たしていいことなのだろうか?
実際、独立時に過激な民族主義が勃興した時期もあったが結局は消えていった。ベラルーシ語という現地の言葉もあるものの、実際にベラルーシでベラルーシ語を話す国民は少ない。大体の国民はロシア語を使うのである。ましてやベラルーシ・ナショナリストもロシア語を用いていることもある。ベラルーシ語を使うことが、一概にベラルーシの国民性を育てることとは限らないのだ。

日本においてベラルーシのことを専門に調べた人は少なく、これが本邦初のベラルーシに関する本である。日本からは遠く離れた国ではあるが、ナショナリズムを考える上で深い示唆を与えるものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2009年8月18日
読了日 : 2009年8月18日
本棚登録日 : 2009年8月18日

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