夜の鳥

  • 河出書房新社 (2003年6月21日発売)
3.59
  • (21)
  • (22)
  • (55)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 217
感想 : 42
5

ヨアキムの毎日は心安まらない。階段のシミには呪いがあり、地下室には殺人鬼がおり、洋服だんすには鳥が… そしてパパは仕事に行けなくなってしまう。
酒井駒子の表紙絵に惹かれて手に取った本ですが、読むにつれて胸の奥をギュッと掴まれるようなヒリヒリした感覚に襲われました。父親は就業三日にして生徒の前に立つことができなくなり教職を辞してしまう。母親は望まぬ仕事に疲れてしまう。そんな両親のやり取りに心を痛め、隙あらば相手を攻撃しようとする友達関係に緊張を強いられる。今まで絶対だと思われていたものが崩れ、価値観がひっくり返る。小学二年生にしてヨアキムの世界はなかなかシビアです。それを象徴するのが夜になると洋服だんすから現れる(とヨアキムが認識している)鳥なのです。
寝る前にベッドの下を何度も確認し、廊下の明かりが入ってくるように少しだけドアを開け、鳥を閉じ込めておけるように洋服だんすに鍵をかける。そんな少し神経質にも思えるヨアキムですが、少年らしい冒険心や恋心や利己心も垣間見え、それが物語を重いだけのものにしていません。読後心の中にヨアキムがスッと佇んでいます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 在庫なし
感想投稿日 : 2016年9月30日
読了日 : 2016年9月30日
本棚登録日 : 2016年9月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする