天智と持統 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2010年11月18日発売)
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「武の人」であるとともに「文の人」でもあるという、われわれによく知られている天智天皇像が、持統天皇によってつくられたという著者の主張が語られている本です。

本書の前半では、『日本書紀』と『鎌足伝』にえがかれた天智天皇像について、批判的な検討がおこなわれており、あらためてわれわれの知っている天智天皇のイメージに対する疑問を提示するとともに、そうしたイメージがだれによってつくられたのかということを明らかにする必要があると主張します。

後半では、持統天皇の生涯をたどるかたちで、天智天皇の事跡がどのようなしかたで継承されていったのかということが論じられます。持統天皇は、夫である天武天皇から政治の手法を学びつつ、永遠の生命力をもつ「天皇」のありかたが代々継承されていくものとして規定することを目的として、天智天皇のイメージをつくりあげたとされています。

とくに前半は、従来の天智天皇にかんするイメージの根拠が薄弱であることを主張しようとする著者のもくろみが先行していて、やや性急な議論になってしまっている印象があります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・地域・文化
感想投稿日 : 2022年10月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2022年10月27日

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