聖徳太子はいなかった (新潮新書 62)

著者 :
  • 新潮社 (2004年4月1日発売)
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感想 : 11
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日本近代文学が専門の著者が、聖徳太子の実在を否定する日本古代史研究の成果を一般の読者に向けて解説した本です。

持統天皇と藤原不比等が体制イデオロギーを強化するために日本書紀を編纂したという説は、日本史研究のアカデミズムから外れたところに位置する上山春平と梅原猛によって広く知られるようになりました。その後、大山誠一によって主張された聖徳太子の実在を否定する説が、テレビ番組などで紹介され、人口に膾炙するようになってきました。本書もまた、そうした政治的な意図によって聖徳太子にまつわるさまざまな伝説が作られたという立場に立っています。

講壇っぽい語り口で読者に親しみやすいように工夫がされているのですが、単に聖徳太子非実在説の内容を紹介しているのではなく、研究史的な視点から従来の「聖徳太子伝説」がどのように受け取られてきたのかということを解説しているため、一見したところよりも読みにくいように思います。それでも、一般向けの解説書では珍しく研究史的な視点が示されており、興味深く読みました。もっとも、そうした研究史的な議論がときにイデオロギー的な偏向の指摘という形を取って展開されるところが、いかにもこの著者らしいのですが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・地域・文化
感想投稿日 : 2015年3月9日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年3月9日

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