ウィリアム・オッカムを中心に、西洋中世哲学を研究している著者が、医療の現場にたずさわっている人びとが直面している問題について考察をおこなっている本です。
著者は、特定の原理をもちこんで一方的に問題の解法を教え諭すのではなく、現場の実践家に付き添い彼らのしていることをことばによって「記述」することで、問題を分析し、整理することが、「言葉の専門家」としての哲学者になしうることだと主張します。
本書ではこのような立場から、QOLやインフォームド・コンセント、ターミナル・ケアなど、生命倫理の重要な問題をていねいに腑分けし分析しています。明示的には書かれていませんが、現代哲学における行為論が、著者の分析の枠組みになっています。
倫理を、医療行為に対する横からのチェック・ポイントとしてではなく、医療行為をとして患者の人生のチャンスを広げ、医療行為において患者の人生のチャンスを支援することから当然帰結するべきはずのものとしてとらえる本書の視点が、とりわけ興味深く感じました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
医療・看護
- 感想投稿日 : 2019年3月3日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2019年3月3日
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