3部作の第1巻である本書では、著者が18歳になるまでの少年期について語られています。
在日コリアンとして終戦を迎え、混乱のなかで心のうちにひそむ暗い混沌にそそのかされて暴力へと走ってしまった、著者の若い頃を振り返っています。さらに、朝鮮学校に入学するも、そこでもみずからの居場所を見いだすことができず、うちに抱えた闇に苛まれつづける著者の苦悩が、後年の著者の眼を通して、また親鸞への信仰や石川啄木のことばにかさねられることで、静かに凝視されています。
むろん著者は在日コリアンという立場にあったことで、その振幅が多くの日本人よりも大きかったということはできるかもしれませんが、ここに描かれている著者自身の心の闇は、社会のなかに居場所をもつことのできない人びとにひとしくいえるような普遍性をもっているのではないかという気がします。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本の小説・エッセイ
- 感想投稿日 : 2018年3月23日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2018年3月23日
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