旅行先で事件に巻き込まれたリリアとトレイズは、自分たちを、そして飛行艇に同乗するカルロら子どもたちを守ろうとします。二人の危機を知ったトラヴァス少佐は、アリソンに連絡を取って救助へ向かわせます。そして最後に、トレイズは少佐から事件の真相を知らされることになります。
トラヴァス少佐は、スパイとしての使命に忠実でありながら、けっして「人間」であることを忘れないことを決意したひとのように見えます。それはちょうど、『アリソン』の第3巻で描かれたアリソンの父と同じ生き方だといえるでしょう。そのころのトラヴァス少佐は、「スパイ」の任務と「人間」ないし「親」とのあいだで苦しみながらも現実のなかでの解決を見つけ出そうとしたアリソンの父を「すばらしい」と称えました。しかしトレイズは、少佐に対して感謝の言葉を口にしながらも、静かに彼を睨みます。どちらが正解だということはできませんが、より親しみを感じるのはやっぱりトレイズの方だと思います。
巻末には二つのサイド・ストーリーが収録されています。「遺書」は、ずっと昔にアリソンがヴィルに宛てて書いた遺書が、アリソンとリリアのもとに届けられるストーリーで、シンプルですが秀逸だと感じました。「メグとリリア」は、スー・ベー・イル出身で周囲から孤立しているメグの「友人第一号」であるリリアとの出会いをえがいています。こちらは、続編シリーズ「メグとセロン」へ向けての導入のようなものでしょうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
少年向けライトノベル
- 感想投稿日 : 2019年1月12日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2019年1月12日
みんなの感想をみる