システム論的な発想にもとづく独自の「生命関係学」を提唱している著者の論文などをまとめた本です。
著者は、生命における情報の統合的創発の謎を解明するために、「関係子」(ホロン)と「場所」という概念を提出しています。関係子は、環境から生命システムに入ってくるさまざまな情報群を秩序化するために相互作用をおこない、コヒーレントな振る舞いを示すと考えられています。また著者は、このような関係子の相互作用において、情報のフィード・バックおよびフィード・フォワードがおこなわれていることに着目し、そうした関係子相互のダイナミクスを「ホロニック・ループ」と呼んでいます。
さらに著者は、自律的な秩序の創発がおこなわれる「場所」の文脈が重要であることについても触れており、華厳思想や西田幾多郎の哲学などに示された東洋の叡智に、生命科学の新しい展開を切り開くようなポテンシャルがあるのではないかという見通しを語っています。
著者のスケールの大きな構想がとくに印象的です。松岡正剛の編集工学研究所が本書の編集に加わっているということもあって、当時の思想状況をうかがい知ることができるようにも感じられました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
哲学・思想
- 感想投稿日 : 2020年3月15日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2020年3月15日
みんなの感想をみる