つぐない [DVD]

監督 : ジョー・ライト 
出演 : キーラ・ナイトレイ  ジェームズ・マカヴォイ  シーアシャ・ローナン  ロモーラ・ガライ  ヴァネッサ・レッドグレイヴ  ブレンダ・ブレッシン 
  • ジェネオン エンタテインメント
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感想 : 120
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■『つぐない』 ジョー・ライト監督 キーラ・ナイトレイ主演

【前編2 堕落論】
 イアン・マキューアンという英国作家の『贖罪』という小説が原作らしい。正直作家も作品も知りませんでした。ただこの映画は美しく、音楽も素晴らしく、登場人物の心理描写も鋭いです。恋愛感情と嫉妬からひと組の男女の人生を狂わせてしまった女性の、償いの告白です。

 20世紀の初頭でしょうか、英国の一地方、身分の高い家の女性と、平民の男性の恋愛描写で始まります。牧歌的な情景と少し怪しい逢引のシーンのなか、女性の妹はその男性に密かなあこがれを持っていました。しかし、姉と男の卑猥な手紙のやり取り、また情事を目撃してしまい言い表せない不快感と不信を抱くようになる。そんな時家に出入りしていた友人女性が何者かに強姦されました。目撃者もはっきりとはない中で、その妹が、私は見た、と名乗りでます。その名指した相手が、姉の恋人の男でした。確たる証拠も何もない中で、自分の不信を確信に育て、訴えるようになりました。男は捉えられ裁判にかけられ、無実の罪で投獄されます。そしてそのまま時代は戦争へと進み、兵士として銃弾の飛び交う戦線に従事するようになります。数々の戦線をくぐり抜けながらも、運命が違えてしまった元の恋人を思う男。ある所で兵士と看護師として偶然出会うシーンがあります。しかし、運命を違えた二人はもう元の関係に戻ることはできません。幾ばくの時間もなく名残を惜しむことも、心痛むような時間でした。
 そして妹はあるときに、あの強姦事件の真犯人を知ってしまいます。訴えた男が犯人であると自分に思い込ませていたことが、自分の嫉妬からでしかなかったことに直面し、そして自分の一言が二人の人生を大きく狂わせてしまったことに、途方もない懺悔の念に駆られます。その思いを抱えてしまい、なんとか償いをできないかと看護師になりました。そして姉に会いにいくのです。しかしそこで聞かされたのは、男の戦死。つぐなうことのできない、自らの犯した罪を背負うことになった妹。年を重ね小説家になった妹は、自らの作品にその体験と懺悔の思いを綴るのです。

 キーラ・ナイトレイが美しいです。ジェーンオースティン原作の「プライドと偏見」の映画化でもキーラ・ナイトレイが印象的でしたが、そのスタッフがそのまま作った作品がこの『償い』ということなので、イメージも重なりました。それぞれの視点を中心として、時間が遡ったり進んだりする手法は、はじめは少し混乱しますが、わかってくるとシーンを色濃く見せます。
 誰もが贖罪を求めて生きているのではないでしょうか。この映画のように鮮明な刺ではなくても、積み重なった雪に埋もれるように身動きが取れなくなる私たちです。赦しを与えてくれる者を求めているのが、人間です。その一言が欲しい、人間なんです。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ② 堕落論
感想投稿日 : 2013年12月22日
本棚登録日 : 2013年10月10日

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