海聖は、三年前、自身の母親が父親を殺してしまうという凄惨な事件をきっかけに、心に深い傷を負った。
唯一残った肉親である年の離れた姉は、そのまま海外で仕事を続けることを選び、姉の親友である青年実業家の藍原のところに預けられることになった。
海聖はそれすらも、姉に裏切られたように感じられ、一切の人を信じられなくなってしまう。
ところが、藍原はそんな海聖を時間をかけて見守り、保護し、どんな暴言を海聖が吐いても許してくれ、慈しんでくれていた。
海聖とは、そんな藍原に少しずつ惹かれていったが、愛する男を独り占めするために殺してしまった母親のように、いつか自分もなってしまうのではないか、という恐怖心から、決して自分のこの想いを口にするまいと考えていた。
一方の藍原は、無心でなついてくる海聖のことを、いつしか愛おしく思っていた。
そんなある日、海聖が発作を起こし、藍原が人工呼吸を施したのに、海聖の身体が反応してしまう。
必死に隠そうとした海聖であったが、その反応が藍原の隠していた想いに火をつけてしまい、海聖は藍原に抱かれてしまう。
という話でした。
本来であれば、ここでハッピーエンドでおしまいになるところだと思うんですが、行為が終わって、うとうとしている海聖が藍原がつぶやいた「こんなはずじゃなかった」という一言で、話がややこしくなってしまいます。
藍原としては「成人してからきちんと告白しようと思っていたのに、こんなはずじゃなかった」という意味での一言だったんですが、海聖にはそうは聞こえなくて、「手を出すつもりじゃなかった」という意味だと受け止めてしまっていて、海聖は悶々とし、ますます眠れなくなって体調を崩して……
でも、まさか藍原は自分の想いが通じてないとは思っていないから、そこで更にすれ違いが起きて……という話でした。
なんというか、海聖が負った心の傷は重くて、とても大変で、最初はそのことに胸がぎゅっとしたんですが。
最後は登場人物全員のちょっとずつの不器用さにちょっと切なくなりました。
話としては書いたみたいに、割とベタな流れだと思います。
薄幸系の受けが好きな方にはオススメです!
- 感想投稿日 : 2012年4月30日
- 読了日 : 2012年4月28日
- 本棚登録日 : 2012年4月30日
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