創竜伝(5)蜃気楼都市 (講談社文庫)

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  • 講談社 (1995年2月7日発売)
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3

 竜童四兄弟日本海側へゆく……とも言うべき話。
 祖父の友人でもあり、同じく学院を経営している日高院長に助けを求められた始めたち四兄弟。
 祖父には遺言で、日高から助けを求められたら必ず応じるように、と堅く言い聞かされており、今回、その求めに応じて出向いたものである。

 行ってみると、その学院のある海東市は妙な雰囲気。
 一方では、名雲一族という金持ちの一族が市全体を牛耳っており、もう一方では新興宗教団体が幅を聞かせている。
 始めたちが救いを求められたのは、その名雲一族が日高が経営する白楊学院の土地を名雲に求められているのだという。
 名雲は名実共に、海東市のボスで、政府中枢にも影響力を持つ。彼に逆らうと海東市では生きて行けないようになってしまうのが普通なのだが、その名雲氏が白楊学院の土地を求めている。
 すなわち、毎日のように市会議員等々が交渉という名目の恐喝をしてきたり、脅かされたり、様々である。
 それに辟易した日高院長が始めたちを読んだのだが……

 最初は、市の実力者である男に学院に手を出さないようにさせればいいのかと思いきや、白楊学院に転校早々に、終と余には教団関係者と思われる人間から嫌がらせを受けるなど、教団の手は学院内部まで及んでいるようで……。

 という感じの話でした。
 ちょっと用心棒を勤めればいいのか、と思えばあれよあれよというまに話は大きくなってしまい、やっぱり政府の中枢を巻き込む事態に。
 始は平和主義者のつもりですが、言ってる事とやってる事が完全に伴ってないですよね。

 最後は龍になって、悪の中枢を破壊してついでに芋づる式にあっちこっちを叩いておしまい。
 こんなことしても、根幹が変わってないから、何も変わらないってところが日本の悲しいところだと思いますが。

 最初、車に乗ってくるところからスタートだったのに、おかしいな、次巻は「番外編」って聞いてたのに、日本に戻ってきてるの?? でも、洋服奪ったのはアメリカ人からだよね?? って大混乱したんですが、きちんと番外編でした。
 それにしても、ちゃんと四人とも竜に変身してる割には、始は講師に戻っているし、日本でちゃんと生活してるし……どの辺りの時期の番外編に当たるんだろう……と本編未読の私は疑問に思いました。

 相変わらず、すさまじい政治批判と竜の美しい話です。
 少し前の左っぽい政治批判を聞き流せる人にはオススメします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(日本)
感想投稿日 : 2013年9月6日
読了日 : 2013年9月6日
本棚登録日 : 2013年9月6日

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