「日本手話」と「日本語対応手話」はどういう違いがあるの? という疑問を抱いたところに目にして手に取った本。
読んでみた結果、日本手話と日本語対応手話の違いだけでなく、日本手話と日本語が根本的に別の言語であることや、必然的に存在する文化の違い、にも関わらずその違いが認識されづらい事から生じている齟齬など、日本社会を生きるろう者の方の視点がわかり興味深かった。
手話を学んだことがなく、聴者であり、これまでにろう者の方との関わりもなかった、という人間(私)にとっては想像以上に異文化なので、読むと視点が広がると思う。
ただ、ひとりの聴者としてこの本を読むにあたり、大前提として、著者の方はひとりの日本社会のなかで生活されているろう者であり、この方の意見がろう者全体の総意であると読み取れるわけではない。という認識は持っておいた方がよいと思う。個人的に著者の方以外のろう者の方のご意見もうかがいたいなと感じる部分もあった。
その上で自分は、手話は日本語とは根本的に異なる言語であるにも関わらず、あたかも日本語の文字の代わりに身振りをあてはめたバージョン違い言語(?)みたいな認識をされてしまっていることがある、という社会の実情になんとも言えない気分になってしまった。言語が異なると必然とその背景文化も異なるのだけれど、その部分にも理解が追いついていないのか、著者の方が体験されたコミュニケーションの齟齬やネイティヴの手話話者に対する視線には、ひどいなあ…と感じてしまうものがしばしばある。自分がもしろう者の方や手話話者と関わる機会があれば、その際はこのようなことのないよう心がけたい。
刊行時期が古く、元になったメルマガの発行時期はさらに以前とのことなので、今はもう少し社会の状況も変わっているのだと期待したい…のだけれど、どうなんだろう。
折良く先日のオリンピック閉会式にてろう者の手話通訳つきの放送がされたという話題を目にしたので、個人の方のツイートの引用で恐縮だけれど、わかりやすくまとめられていたツリーのURLを記載しておく。
https://twitter.com/c_ssk/status/1424584101319774208
- 感想投稿日 : 2021年8月23日
- 読了日 : 2021年8月21日
- 本棚登録日 : 2021年8月12日
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